Bluetoothで繋がったのは学校1の美少女でした。

穂村大樹

第38話 作戦実行

沖田は動揺から自分で祐奈の事を好きだと言い放ってしまった。沖田が祐奈の事を好きなのは間違いないだろう。

榎田が俺たちの事をオタクなんて気持ち悪いと馬鹿にしたとき、沖田が祐奈に便乗して俺たちの擁護をしていた事を思い出して、こいつもしかして? とは思っていた。

祐奈が好きだと俺にバレた沖田は激しく動揺している。

畳み掛けろ。今がチャンスだ。

「祐奈が好きな声優を教えてやろうか?」
「あ、声優? そんなのアニメ以上に興味もねぇよ」
「祐奈が好きな声優を沖田が好きになったらどうなる?」
「……仲良く一緒に話ができるな」
「そーゆことだ」

沖田は左手で右手を支え、右手を顎の下に構え考え込む。

「ありだな」
「祐奈の好きな声優を教えるから、ちゃんとその声優が出演してるアニメも見ろよ?」
「分かった」
「よし、交渉成立だ」

何とか沖田を丸め込んだ。陽キャグループのリーダー、沖田が落ちてしまえばこっちのもんだ。

「ま、待てよ。沖田もアニメ見るってのか?」
「あーまぁそーだなー。見なくはないかなー」

沖田ブレブレだな。今まで榎田に話を合わせてアニメオタクを気持ち悪いと行っていたというのに、祐奈と仲良くなりたい一心でアニメを見ようとしてるんだもんな。そりゃ榎田も驚くわ。

「お、俺は見ないぞ‼︎ アニメなんて気持ち悪いオタクの見るもんじゃねえか‼︎」

沖田に引っ付いているだけの奴かと思っていたが以外と芯がブレない榎田に手を焼く。

「まぁ見てあげてもいいんじゃない? はっきり知りもしないでアニメを好きな人のことを馬鹿にするなんて理不尽だしさ」

そうフォローしてくれたのは祐奈の友達、花宮だ。

花宮は以前、風磨がアニメが好きだと知った時もあまり悪い印象を持ってしまったようには見えなかった。アニメに対して拒否反応は薄いようだ。
凝り固まった考えをもたず、柔軟に発言してくれる花宮の存在は大きかった。

「そ、そうですよ。私も祐奈ちゃんとアニメの話をしたいです」

花宮の発言に便乗してくれた委員長は恐らく俺たち側に味方をしてくれるだろうと思っていた。

クラスをまとめる委員長が、誰かのことを気持ち悪いと言っている奴を見れば本当は注意したい気持ちが大きいはずだ。

「……みんながそこまで言うなら」

よし、最後の牙城、榎田が折れた。

沖田よりも榎田の方が粘るとは思っていなかったが何とかアニメを見てもらえるよう話をつけることが出来た。

そして俺が昨晩必死に厳選したアニメを陽キャグループのみんなに伝えた。

「それじゃあ俺は帰るから。明日、祐奈に感想を言ってやってくれ」

「――渋谷」

家に帰ろうと歩き出した俺の名前を呼んだのは花宮だ。花宮以外の陽キャグループメンバーはは帰ろうと歩き出していたが、花宮はわざわざ俺のところに戻ってきて声をかけてきた。

「あ、あのさ。また風磨の好きなアニメ教えてよ」
「ん? 分かった。また聞いとくよ」

花宮は「ありがと」とお礼をしてから嬉しそうに手を振って走って陽キャグループに戻っていった。

あいつ、風磨の事が好きなんだな。

好きな人がアニメ好きだと知って幻滅するわけでもなく、むしろ好きな人が好きなアニメを見て歩み寄ろうとする姿勢には感心させられる。

榎田にも見習って欲しいもんだ。

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