Bluetoothで繋がったのは学校1の美少女でした。

穂村大樹

第37話 反撃

祐奈の家にお邪魔した翌日、祐奈は予定通り学校を休んだ。
昨日、榎田にアニメオタクであることを気持ち悪いと言われ傷ついた心を癒すには1日じゃ短いくらいだ。

教室では陽キャグループの沖田と榎田がひそひそと会話をしている。祐奈が休みであることを心配しているのか、それとも……。

噂が広まるのは光の速さよりも早く、同級生にもすでに祐奈がアニメオタクであると言うことが広まっていたが、沖田と榎田以外の同級生は特に祐奈を否定するわけでもなく、むしろ可哀想だと話している。

しかし、クラスの中心である陽キャグループに逆らえる者は誰もおらず、アニメオタクの祐奈は気持ち悪いというイメージが定着しそうになっていた。

祐奈は明日から風磨や楓のいるアニメオタクグループに来る。
かといって、祐奈の悪評をこのままにしていいわけがない。

祐奈は学校1と謳われるその可愛さで皆から好かれているが、祐奈の魅力はそれだけではない。

皆は本当の祐奈を知らない。こんなことを言うのもおこがましいが、本当の祐奈を知っているのは祐奈が心ゆくままにアニメの話が出来る俺だけだ。

見た目だけ判断して欲しくない。祐奈の魅力をもっと知って欲しい。そうすれば自ずと祐奈の悪評は消え去り、以前よりも人気になるだろう。

放課後、陽キャグループが学校を出たところで声をかける。

俺が「おい」と声をかけると陽キャのメンバーが一斉にこちらを振り向く。

「お、アニメオタクの渋谷さんじゃないですか」

皮肉ったらしい言葉を投げかけてきたのは榎田。こいつは思ったことがすぐ口に出る。相手の気持ちを考えていない発言が多い。

祐奈に気持ち悪いと言い放ったのも榎田だ。

「何の用だ?」
「頼みがある。俺が今から教えるアニメを今日中に5話まで見てくれ」

俺がそう発言をすると沖田と榎田が顔を見合わせ一瞬間が空く。

「な、何言ってんだよお前。俺たちがアニメなんて見るわけないだろ」
「それな‼︎ なんで俺たちがアニメなんて見なきゃいけないんだよ。5話までって言ったら1話30分のアニメって考えても150分もかかるじゃねぇか。バカじゃないか?」

俺の提案に聞く耳を持たず馬鹿笑いする2人を見て心底腹が立ったがぐっと堪える。

沖田と榎田の反応は予想していた。無論、悪者退治をする案は用意してきた。

「馬鹿なのはそっちだ。アニメってのはオープニング曲とエンディング曲、そしてコマーシャルを含んで30分だ。それを全部飛ばせば20分程度で1話を見ることができる」
「……そ、そうなのか」
「そうだ。知りもしないでテキトーな発言してんじゃねぇ」

ぐぬぬ、と引き下がる榎田に変わって次は沖田が俺に食ってかかる。

「なんだそのえらそうな態度は。調子乗ってんじゃねぇぞ」

長身イケメンの鋭い眼力に威圧されたが、それを跳ね除け俺は話を続ける。

「調子になんかのってねぇ。それよりちょっと耳貸せよ」
「あ? 何で俺が耳を貸す必要がある」
「何でもいいから。はよはよ」

手招きをして沖田を俺の近くまで呼ぶ。そして俺は小声で沖田に耳打ちする。

「おまえ、祐奈が好きだろ」

沖田は一気に顔を紅潮させる。

「ばっ、馬鹿おまえ何言ってんだ‼︎」
「違うのか?」
「違うわけないだろ‼︎」

いや違うわけないんかい。

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