Bluetoothで繋がったのは学校1の美少女でした。

穂村大樹

第11話 夜の電話2

何も警戒せずモカにiPhoneを渡してしまった事を後悔している。

青少年であれば見られたくない物の一つや二つは必ずあるものだが、俺には見られて困るものなど何も無かった。

楠木とラインをしている事はすでにモカには伝えたし、それを見られたとて困ることは無い。

強いて言うのであればアニメの美少女キャラクターの画像や声優の写真であったりは保存をしているが、モカは俺がアニメを好きなことを知っている。今更それを見られたところで恥ずかしくもなんともない。

そんな油断が招いたこの状況。
モカは俺に黙って楠木に電話をかけていた。既にコールが鳴っている。もう5回は鳴っただろうか。

よし、10回鳴らして出なかったら切ろう。そうしよう。

5回では短いしな。10回だ、10回コールが鳴ったら電話を切る。

次が6回目。

プルプルプ……ガチャ

「も、もしもし?」

で、出た。楠木が電話に出た。

電話をかけているのだから楠木が出るのは当たり前なのだが、10回コールが鳴ったら電話を切ろうと思ってたのに。6回目で出るとか早すぎるだろ。
きっと優しい楠木は俺を待たせてはいけないと出来るだけ早く電話に出てくれたのだろう。

「あ、渋谷だけど」
「は、はい。こんばんわ」

だ、ダメだ。モカが急に電話をかけるからなんの準備も出来ていない。
焦って次の言葉が出ない。

「お礼が遅くなってごめんなさい。今日に限ってクラスメイトにやたらと絡まれて中々返信が出来なくて」
「お礼だなんて。運良くチケットが当たっただけだよ。お礼なら神様に言った方が良いかもな」

初めての女子との電話。上手く喋れているだろうか。面と向かって話すのとはまた違った緊張感があった。

「チケット、本当にありがとうございます。まさかゆいにゃんのライブに行くことになるなんて夢のようです」
「俺もまさか日菜とゆいにゃん両方のライブが当選するとは思ってなかったよ」
「また一緒に計画を立てましょう‼︎ ゆいにゃんのライブには行ったことがないので、コールとか教えて欲しいです」
「俺もあんまり覚えてないけどな。計画を立てるならこないだのファミレスで良いか?」
「はい! あそこのファミレスなら外の人からも見られにくいですし居心地が良いのであそこが良いです」
「おっけー。じゃあまた予定はラインで」
「はい。……それじゃあ切りますね」
「了解だ。また明日な」

楠木との電話は想像より円滑に進み、事なきを得た。

それにしてもまた楠木と2人でファミレスに行く予定が出来たな。
関わることは一生無いと思っていた美少女と電話やお出かけをすることになるとは。

人生何が起こるかわからないもんだ。

急に電話をかけられた時は焦ったがモカには明日アイスを買ってきてやろう。あいつ、アイス好きだからな。

電話の後、俺と楠木のラインは日をまた跨ごうかという時間まで続き、明日の放課後ファミレスに集合することになった。

明日の楠木とのご飯を楽しみにしている自分が居たことに俺は違和感を感じていなかった。

そして次の日、昼休みに風磨と楓とアニメの話をしている。

「今日、アニメイロ行かないか?」

風磨は唐突に俺と楓をアニメイロに誘った。

アニメイロとはアニメのグッズや本、CDなど様々なアニメグッズを取り揃えているアニメ1色に染められたお店のことだ。

「お、いいね。私も行きたい」

楓は用事がある事が多く、中々一緒にアニメイロに行くことはないが今日は用事も無いようで乗り気だった。

一方の俺はというと、楠木との予定が入っており、この誘いをどう断るか考えていた。

いつもなら間髪入れずに行くと返事をする俺が、無言でその話を聞いていたら怪しまれるのは間違いない。

ここは正直に話すしかないだろう。

「ごめん、俺用事があるから今日は2人で行ってきてくれ」
「祐に用事? 珍しいね」
「んーまあちょっとな。悪いことには手を染めてないから安心せい」
「それなら今日はアニメイロ行くのやめとくか? 3人の方が良いしな」
「そだね」

せっかくの誘いを断ってしまった申し訳なさに苛まれていたが楠木とのご飯は避けられない……。

すまんな2人とも。俺は1歩、いや、何十歩、何百歩も先に行くぜ。

俺が調子に乗っているとラインの通知が鳴り確認する。

『今日、友達にカフェに誘われてしまって……。断れなくてそっちに行くことになってしまいました。本当にごめんなさい』

……。

「よし、何時の電車でアニメイロ行く?」

コメント

コメントを書く

「恋愛」の人気作品

書籍化作品