Bluetoothで繋がったのは学校1の美少女でした。

穂村大樹

第8話 当落発表

「おはーっす」
「「おはー」」

俺の挨拶におはー、と返す風磨と楓。これはいつも通りの光景で違和感は無いのだが、楓の風貌に少し違和感を覚えた。

楓は前髪は目の下まで伸びており目は隠れていて表情が読みづらい。それが楓の特徴でもあり当たり前の光景なのだが、昨日学校1の美少女をまじまじと見てしまったため、あまりの地味っぷりに違和感を覚えたのだ。

楓も前髪をあと5センチ切り顔を出して、服装もファッション雑誌を真似て可愛く来こなせばある程度可愛くはなるはずなのに。

いや、たとえちゃんとすれば楓が可愛くなるとしても今のままでいてくれなければ、落ち着いてアニメの話が出来ないではないか。

そう考えるあたり俺はやはり楠木より楓派なのだと自分に言い聞かせた。

「お、なんかいつもより気分明るくないか?」

風磨にそう言われ、一瞬驚いたが気のせいだろ、とその発言を一蹴する。

まさか自分が楠木という学校1の美少女とファミレスデート(デートではない)をしたりラインでアニメの話をしたからって浮かれているなんてまさかそんなはずがない。

「本当だ。祐なんかいい顔してる。可愛い彼女でも出来た?」

楓にまで表情のことを突っ込まれ流石にやばいのではないかと不安になる。

「馬鹿なこと言ってんじゃねぇよ。俺に女っ気がないのはお前らが一番知ってるだろ。それに俺の彼女は日菜だけだ」
「いや、日菜も彼女ではないだろ」

しっかりと風磨に突っ込まれた後、いつも通りアニメの会話をしてから授業が始まった。

いやー危ない危ない。こりゃいつかボロが出るな。気をつけなければ。

今日は日菜のライブとゆいにゃんのライブの当落発表日。ゆいにゃんのライブに関しては失礼ながらついで程度にしか考えていない。
やはり大本命は日菜のライブだ。

楠木のためにゆいにゃんのライブも当選していて欲しいが、日菜のライブの当落のことで頭はいっぱいだった。

当落発表は12時。丁度昼休みの時間だ。

朝の授業が始まってからそわそわして授業の内容はこれっぽっちも頭に入ってこない。

学生の仕事は勉強なのだから、将来のためにも勉強は大切だ。

半日が1日にも1週間にも感じるほど長いような気がしたが、ようやく昼休みを迎えた。

お昼休み開始は11時50分。その10分後には当選した人、落選した人で明暗が分かれるなんて考えたくもない。

「なんか祐がそわそわしてるなと思ったら今日は日菜のライブの当落発表か」
「ああそうなんだよ。もう心臓が破裂しそうだ。昼飯もろくにのどを通らん」
「まあ祐がチケット当ててくれれば俺もライブに行けるからな。頑張って当ててくれよ」
「……? 誰がお前と行くって言った?」
「え? むしろ祐は他に行くやついるのか?」
「今回はたまたま行きたいって言った知り合いがいるんだよ。だから風磨とはいけん」

風磨は、一緒にライブに行くやつなんて本当にいるのか?と懐疑的な眼差しで俺を見つめる。

俺自身風磨と楓以外のやつとライブに行く日がやって来るなんて驚きなんだからな。風磨が驚くのも無理はない。

楠木の様子を見るが相変わらず楠木は大人数で席をくっつけてみんなでご飯を食べている。
その空間で当落の確認ができるのかと不安になった。

俺の不安を無視してついに時刻は12時に到達した。

「なんかそわそわするね」
「楓がそわそわする必要ないだろ。別に一緒に行くわけじゃないんだから」
「そうね。まあなんとなくかな」

楓が何を言っているのかわからないがまあそんなことはどうでもいい。

俺は即座にチケット販売サイトのホームページで当落の確認をする。

当落の記載場所に目をやると

「……あ」

まさかそんなことがあり得るのか。

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