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穂村大樹

第71話 秘密、隠していた一面

文化祭での文芸部の活動が演劇に決定した翌日の放課後、俺たちは部室に集まり演劇の内容について打ち合わせをしていた。

「それじゃあ演劇の案について報告してもらおうと思うのだけど、我こそはという人はいるかしら?」

演劇の内容を報告する順番が最初なのは恥ずかしさもあり、中盤で報告したいという思いが強い。

それは皆が思う事なので、我こそは‼︎ と手を挙げる奴は中々いない……。

「はい‼︎」

俺の予想を裏切って手をあげたのは紫倉だ。

あれ、なんかこいつ目が輝いてない? こういう時積極的に行くような奴だっけ?

「それじゃあ紫倉さん、報告お願いするわ」
「BLなんてどうでしょうか‼︎」

――は? BL?

「せっかく玄人くんと白石先輩っていう美形男子が2人揃っているので、この2人を前面に押し出したBL展開ならみんな喜んでくれると思うんです‼︎」

いや、喜ばないから。喜ぶとしてもごく少数だから。てか玄人はともかく俺美形じゃないし。紫倉の目には俺がどう映ってんの? なんか勝手に美化されてない?

というか紫倉、そんな趣味があったのか……。

「さ、流石にBLはまずいのではないかしら。万人受けする話でないと……」
「何言ってるんですか緑川先輩‼︎ やる前からまずいと決めつけるんじゃなくて、とにかくやってみるんじゃないんですか‼︎」

うん、確かに昨日の緑彩先輩の理論で言うと紫倉の今の話も当てはまるよね。でもなんか違う。
とはいえ、昨日俺がどうにも出来なかった緑彩先輩をたじろがせ、押せ押せの紫倉には感嘆する。

「こら、紫音。欲望が抑えきれてないし、緑川先輩が困ってるよ。気持ちを抑えて」
「でも……」
「流石にBLはまずいよ。この学校の中でもBL好きなんているかいないかってレベルだろうし」
「そうだよね……」

心底落ち込んだ様子の紫倉の背中を玄人は優しく撫でる。

なんか少しだけ可哀想に見えるな。

「ほ、他に何か案は無いかしら。青木さんはどう?」
「色々考えたんですけどあんまり思い浮かばなくて……」
「落ち込まなくても大丈夫よ。気持ちはよく分かるわ。私も100個くらい案が浮かんだけど結局決めきれてないから」

その話を聞くと蒼乃のどこか大丈夫なのか理解しかねる。緑彩先輩は普段から本を大量に読んでいるだけあってレパートリーが多い分、演劇で何をするか決めかねてしまうのだろう。

「紅梨は何かある?」
「私も特には思い浮かんでないです。まぁ定番で白雪姫とかロミオとジュリエットとか、そんな感じでいいんじゃないですか?」
「なるほど。確かに王道は面白いからこそ王道なんだものね。それもありだわ」
「俺も紅梨と同じ意見です」

俺は紅梨の意見に賛同した。俺も色々と家で考えてはみたが、良い案は思い浮かばず。それならベタベタのストーリーでも親しみのある話を披露した方が反響も大きいだろう。

「そうね……。特にナイスアイデアがあるわけでもないしね」
「あのー、ちょっと良いっすか?」
「玄人くん、何か良い案が思い浮かんだ?」
「自分たちで新しく話を作るのはダメなんですか?」
「――それよっ‼︎」

あーもあめんどくさい。

玄人、最近緑彩先輩の扱いが上手くなってきているな。

そして俺たちはまた、緑彩先輩がピンときた玄人の発言で演劇の内容を自分たちで創作する事にした。

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