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第57話 恐怖、戦略的行動
「白太先輩、お気をつけて‼︎」
「おう。蒼乃も気をつけてな。お化け役もいないんだし、怖がる必要は無いぞ」
肝試しが始まり、他の部員に見送られた俺と紅梨は2人で肝試しに出発した。
幽霊は信じていないものの、夜の山道を歩く事には若干恐怖を感じているが、紅梨とのペアは安心感がある。
「白太はこういうの、怖くないの?」
「ああ。幽霊の存在とか信じてないし、いるはずもないものに驚く必要は無いからな」
「ふーん。意外と度胸あるんだ。結構ビビりなのかと思ってたけど」
「紅梨は幽霊とか苦手なのか?」
「私が幽霊とか怖がるように見える?」
「……まぁ見えないな」
紅梨は普段からポーカーフェイスで感情を表に出すタイプではない。紅梨が幽霊や夜道に恐怖を感じない事にやたらと納得しながら肝試しのコースを進む。
それに、肝試しとは言ってもこの肝試しには幽霊役がいない。
要するに、どこから幽霊が飛び出してくるのかと気を張る必要が無いのだ。
こんな楽な肝試しは無いと気を抜いていた矢先、草村の向こうからガサガサと大きな物音がして、余裕ぶっていた流石の俺も多少の驚きを……
「キャァ‼︎」
俺の横を歩き怖くないと言い張っていた紅梨は大きな声をあげ、飛び跳ねる様に抱きついてきた。
その瞬間、俺は修学旅行で紅梨に抱きつかれたときの事を思い出す。
紅梨のあの行動の意味を深読みすればするほど紅梨の事を意識してしまう。
「……あの、紅梨さん?」
紅梨の名前を呼ぶと、自分が怖くないと言い張っていたことを思い出したかの様に俺から離れた。
「――なに? どうかした?」
いや、いやいや。いやいやいや。
今思い切り驚いたよね? 怖がってたよね? 怖くないって言ってなかった?
「え、今普通に驚いて……」
「なにか?」
はい、要するに無かったことにしようとしているわけですねわかります。
紅梨がそうしたいと思うのなら、これ以上突っ込むのはやめて何か別の話題を考えよう。
「肝試しとは言え紅梨と2人になるのは久しぶりだな」
……あれ、俺今自分から微妙な空気になりそうな発言した?
「うん、そうだね」
それからしばらく沈黙が生まれる。
やはり俺は自ら微妙な空気を生み出してしまったようだ。
「あの、白太?」
「なんだ?」
「ちょっと来てほしいところが……キャアアァァ‼︎」
紅梨が俺に何かを話そうとした直前、またも大きな物音がして紅梨は再び俺に抱きついてきた。
な、何度も何度も抱きつかれると流石に俺の理性が……。
「あのー、紅梨さん? 流石にこれで怖くないって言うのは無理があるのでは……」
「……怖いものは怖いもん」
遂に肝試しを怖いと打ち明けた紅梨は涙目になっている。
これまで弱気な紅梨を見た事が無いため、新鮮な気分だ。
「強がらなくて良いんだよ。誰だって苦手なものはある」
「……ありがと」
「あのー、そろそろ離れてくれない?」
「……」
プルプルと震え怯えきった様子の紅梨は俺から離れようとしない。だが、このままでは歩く事が出来ず先に進めない。
「これは戦略的行動。仕方がない行動。だから……。他意は無い」
「分かったよ。じゃあせめて腕にしてくれないか? このままだと歩きづらいし」
コクッと素直に頷いた紅梨は一度俺から離れた後で俺の腕にしがみつき、俺たちは密着したまま肝試しを続けた。
「おう。蒼乃も気をつけてな。お化け役もいないんだし、怖がる必要は無いぞ」
肝試しが始まり、他の部員に見送られた俺と紅梨は2人で肝試しに出発した。
幽霊は信じていないものの、夜の山道を歩く事には若干恐怖を感じているが、紅梨とのペアは安心感がある。
「白太はこういうの、怖くないの?」
「ああ。幽霊の存在とか信じてないし、いるはずもないものに驚く必要は無いからな」
「ふーん。意外と度胸あるんだ。結構ビビりなのかと思ってたけど」
「紅梨は幽霊とか苦手なのか?」
「私が幽霊とか怖がるように見える?」
「……まぁ見えないな」
紅梨は普段からポーカーフェイスで感情を表に出すタイプではない。紅梨が幽霊や夜道に恐怖を感じない事にやたらと納得しながら肝試しのコースを進む。
それに、肝試しとは言ってもこの肝試しには幽霊役がいない。
要するに、どこから幽霊が飛び出してくるのかと気を張る必要が無いのだ。
こんな楽な肝試しは無いと気を抜いていた矢先、草村の向こうからガサガサと大きな物音がして、余裕ぶっていた流石の俺も多少の驚きを……
「キャァ‼︎」
俺の横を歩き怖くないと言い張っていた紅梨は大きな声をあげ、飛び跳ねる様に抱きついてきた。
その瞬間、俺は修学旅行で紅梨に抱きつかれたときの事を思い出す。
紅梨のあの行動の意味を深読みすればするほど紅梨の事を意識してしまう。
「……あの、紅梨さん?」
紅梨の名前を呼ぶと、自分が怖くないと言い張っていたことを思い出したかの様に俺から離れた。
「――なに? どうかした?」
いや、いやいや。いやいやいや。
今思い切り驚いたよね? 怖がってたよね? 怖くないって言ってなかった?
「え、今普通に驚いて……」
「なにか?」
はい、要するに無かったことにしようとしているわけですねわかります。
紅梨がそうしたいと思うのなら、これ以上突っ込むのはやめて何か別の話題を考えよう。
「肝試しとは言え紅梨と2人になるのは久しぶりだな」
……あれ、俺今自分から微妙な空気になりそうな発言した?
「うん、そうだね」
それからしばらく沈黙が生まれる。
やはり俺は自ら微妙な空気を生み出してしまったようだ。
「あの、白太?」
「なんだ?」
「ちょっと来てほしいところが……キャアアァァ‼︎」
紅梨が俺に何かを話そうとした直前、またも大きな物音がして紅梨は再び俺に抱きついてきた。
な、何度も何度も抱きつかれると流石に俺の理性が……。
「あのー、紅梨さん? 流石にこれで怖くないって言うのは無理があるのでは……」
「……怖いものは怖いもん」
遂に肝試しを怖いと打ち明けた紅梨は涙目になっている。
これまで弱気な紅梨を見た事が無いため、新鮮な気分だ。
「強がらなくて良いんだよ。誰だって苦手なものはある」
「……ありがと」
「あのー、そろそろ離れてくれない?」
「……」
プルプルと震え怯えきった様子の紅梨は俺から離れようとしない。だが、このままでは歩く事が出来ず先に進めない。
「これは戦略的行動。仕方がない行動。だから……。他意は無い」
「分かったよ。じゃあせめて腕にしてくれないか? このままだと歩きづらいし」
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