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穂村大樹

第50話 強化、繋がりを深めよう

蒼乃と別れたあと、教室に入るとすでに玄人と紅梨が教室に到着していた。
自分の席に荷物を置き、いつも通り2人の会話に参加する。

「おはよー」
「おはよ。月曜日の朝から見せつけてくれるじゃん」

なぜか機嫌が悪い様子の紅梨は俺をジト目で見つめてくる。
そしてすぐに窓側に顔を向け、肘を机に付き手のひらで顔を支えている。
紅梨の行動の意味がわからず、玄人に質問した。

「どうした? なんか紅梨、機嫌悪くないか?」
「窓から白太と蒼乃ちゃんが一緒に登校してくるのが見えたんだよ」
「それでなんで紅梨が機嫌が悪くなってるんだ?」
「……さあな。本人に直接聞いてみたらどうだ」

玄人に質問しても紅梨の機嫌が悪い原因は明確にならない。

いや、そういえば紅梨とは色々あったな……。

修学旅行初日の夜、紅梨と2人でホテルの周りを散歩中、急に紅梨が俺に身を寄せしばらくそのままの状態で立ち尽くしていた。

あの時の行動の意味は今も分からないが、ただの友人である男子に、身を寄せる、という行為をするだろうか。
それに、紅梨の機嫌が悪くなっているのは俺が蒼乃と仲良く登校しているところをみて嫉妬したと考えられる。

そうなるとやはり紅梨は俺のことを……。

と、都合よく考えてしまいたくなるが流石にそこまで馬鹿じゃない。
紅梨とは中学校からの仲だが、今までそんな素振りを見たことは一度もない。

紅梨に限って俺のことが好きだなんてあり得るはずがないのだ。

「馬鹿、本人になんて聞けるわけないだろ」
「まぁ放っておけばそのうち治るさ」

結局、授業が始まってから部活に行くまで、紅梨の機嫌が回復することは無かった。



◇◆◇◆◇



放課後、紅梨と玄人と3人で部室に行くとすでに緑彩先輩と蒼乃と紫倉が部室に到着しており、何やら会話をしていた。

うん、土曜日ぶりの緑彩先輩、やっぱり綺麗だ。

「どうしたんですか? 何かあったんですか」
「白太くん」
「は、はい」
「合宿をするわよ‼︎」

……合宿?

運動部であれば厳しい練習とか、大盛りのご飯を無理矢理食べさせられたりとか、それでも終わってみると楽しかったなって思ったりとか、なんとなく楽しい雰囲気を想像する。

しかし、文芸部で合宿なんて聞いたことないぞ。

一体何をするんだ?

「合宿? それはいいですけど、文芸部の合宿って何をするんですか?」
「今回の合宿は朝から晩まで小説を読む、っていうのは当たり前として、部員の仲を深めるって目的も含んでるわ」
「はぁ……」

言われてみれば蒼乃と紫倉が入ってきて歓迎会とか一切してないしな。
そう考えると、部員の関係をより強固なものにするための手段として、合宿をするというのは正しいのかもしれない。

「でも合宿ってどこでするんですか? そんな場所あります?」
「ええ。私の家の別荘でやりましょう」

……ベタな展開キター。

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