大人気YouTuberのクラスメイトから黒子に指名された件

穂村大樹

第52話 ライブ配信


神野の家に到着した俺たちは手際よくライブ配信の準備を進め、配信を開始できる状況になった。俺はハピネスの横に立ち、お盆で顔を隠している。

ライブ配信を開始すると、まずはハピネスが1人で動画の概要について説明を始めた。

「はぴるーん‼︎ いつもニコニコハピネスです‼︎ はいそれでは今日は、スミくんの生の顔が見えるかも⁉︎ ということでお集まりいただいたみなさんありがとうございます‼︎」

流石ハピネス。ライブ配信だろうが緊張することもなく、スラスラと説明を進めている。緊張する場面のはずなのに楽しんでいるようにすら見えた。

「まあ色々説明するより状況を見てもらった方が早いから、早速本日の主役に登場していただきましょう‼︎ それじゃあスミくん出てきて〜」

ハピネスに呼ばれた俺は黒子の服を着用し、顔を覆っているマスクだけは外してお盆で顔を隠した状況で登場した。
うわ、これお盆で顔を隠してるとは言えやっぱちょっと怖いな。俺の顔を隠しているこのお盆が無くなれば俺の顔が全世界に晒される事になると考えると、恐怖心を感じずにはいられなかった。

「はい、みなさん。この状況見たら大体わかりますよね。そう、スミくんは今から、自分の顔が見えないようにお盆芸をやります‼︎ パチパチパチパチ」

ハピネスが拍手をしながらそういうと、コメント欄にも大勢のコメントが寄せられた。コメントよりも拍手よりも私に慈愛を下さい。

「こんな企画よく考えたなw」
「顔より股間見せろ」
「もしかしたら顔の後ろには股間が……」

うん。ほんと視聴者の人ふざけてない? 気持ち悪い顔かもしれんけど流石に顔の部分に股間は無いから。

「それじゃあスミくん、言い残したことはない?」

その書き方されると今から死ぬ人みたいなんだけど……。てかそれ顔見える事前提の書き方じゃねぇか。そりゃ視聴者が増えるのは嬉しいけど、俺だって顔が見えるのは全力で阻止したい。

「それでは始まります。スミくんのおぼん芸です‼︎」

ハピネスはカメラと俺の間に正座し、俺の方をじっと見つめている。

カメラに背を向けているハピネスの表情は視聴者もお盆で顔を隠している俺からも確認は出来ないが、きっとすげぇニヤニヤしてるんだろうなぁ。笑い事じゃないんだけど。

俺がここでお盆外を失敗して顔を晒せば、俺のファンだと言ってくれている人も幻滅してハピネスチャンネルを見なくなってしまうかも知れない。神野の迷惑になる事だけは避けたいので失敗する訳にはいかない。

俺は神野が流すドラムロールの後で出来るだけ早くお盆を回した。



……どうだ? 成功したのか⁉︎

自分ではコメントも何も見えないから結果が分かない。本当にどうなった⁉︎

「……おお‼︎ スミくん完璧だよ‼︎ コメントでも全然見えなかったってみんな言ってる‼︎」

神野の反応的に、俺のお盆芸は成功したようだ。

『おおおお上手いなスミくん』
『何も見えんかったわwww』

ライブ配信終了後、コメントを確認したがどうやら俺の顔が映像で分かることは無かったらしい。

「みんなスミくんのイケメンフェイスは拝めなかったみたいだね」

そんなことないと俺は手を横に振る。イケメンとは正反対の存在だからな。

「そんなそんな謙遜なさんなって。スミくんはイケメンだよ」

いや俺はイケメンじゃないだろ。委員長にも同じ事言われたけどさ。まぁハピネスのは動画を盛り上げるための発言だわな。俺がイケメンだと言えばみんなさらに俺がどんな顔をしているか気になり動画を見てくれるようになるだろう。

それでも、神野にイケメンって言われて嬉しくないわけがなく、お盆芸が成功した安堵からか俺はおぼんの裏側でこっそり笑顔を作っていた。

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