大人気YouTuberのクラスメイトから黒子に指名された件

穂村大樹

第50話 委員長の気まぐれ


ライブ配信当日の朝、緊張のせいか少し早く目が覚めた俺は早々と身支度を済ませ家を出た。いつもより出発の時間が早くなったからか、普段は通学路で出くわす事の無い委員長に遭遇した。

委員長は委員長という立場上、他の生徒よりも早く登校して仕事をしなければならないためこの時間の登校となっているのだろう。

「ちょっとちょっと義堂くん‼︎」
「お、おお。どうした?」

委員長はこれまで見たことがない程の勢いで俺に詰め寄る。ちょっと、顔近いですよキスでもします? いや、やめとこう。昨日の晩飯餃子だったわ。

「どうしたもこうしたもないよ‼︎ ハピネスのツイッター見た!?」

ハピネスのツイッターの話という事は恐らく昨日のライブ配信の告知の件だろう。そりゃハピネスがTwitterで告知すりゃ広まるよなぁ。

「見た。スミ君の件だろ?」
「そうそう‼︎ 私実は最近ハピネスと同じくらいスミ君のことも大好きでさ。ハピネスに従順な子犬みたいな可愛らしさもあって、それでいてハピネスをエスコートする紳士でもあるってゆうかもう色々やばくない!?」

ハピネスがスミくんは意外と人気があると言っていたが、まさか委員長も俺の事を……。いや、そういうと語弊があるな。委員長もスミ君のが好きになっていたのか。

俺、何もしてないけどな。真っ黒な服見に纏って画面の脇で常に忍者座りして構えて、ハピネスに何かをお願いされればその通りにしているだけの飾りの様な物だ。

どこに魅力を感じるのやら……。

「スミくんの顔、やっぱり気になるか?」
「気になるんんてもんじゃないよ‼︎ もう私の中ではスミくんは白馬の王子みたいな綺麗な顔をイメージしちゃってるんだよね。まあどんな顔でも私はスミくんが大好きだから嫌いにはならないけどね‼︎」

うう、笑顔が眩しい。どうした委員長、大丈夫か委員長。
もうハピネスのことを語る時よりも目をキラキラ輝かせて話しちゃってるんですけど。ごめん、スミくんはこんな奴です。白馬の王子には程遠いです。

「人を見た目で判断しないことは大事なことだな」
「そりゃもう。私はスミくんの綺麗な心に惚れてるんだよ。メンタルイケメンだよ」

委員長もこう言ってはいるが、スミくんの中身が俺のような貧弱で何の取り柄もない高校生だと分かれば拍子抜けして一気にスミくんの事が好きではなくなるんだろう。

「俺もメンタルイケメン目指すわ。顔は壊滅的だから」
「……そんなことはないと思うよ?」
「ーーえ?」
「私は海翔くんの顔、好きだけどなあ」

委員長の急な切り返しに目を丸くさせた俺はしばらく考えた。俺の顔が好きだって? 画面偏差値ゼロと言っても過言ではない俺の事を?

いや、それ以前にそれってもはや告白じゃない? それは気が早いな。

「そ、そうか」
「うん。私はそう思う。それじゃあ今日も一日ご安全に‼︎」
「ご、ご安全に……」

どんでもない一言を残して委員長は走り去っていった。

俺の顔が好き? 本当かそれ?

今日は放課後のライブ配信の事で頭が一杯になっている予定だったが、ライブ配信の事は一気にぶっ飛び、放課後まで委員長の事を頭の中で考え続けていた。

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