大人気YouTuberのクラスメイトから黒子に指名された件
第44話 150万人突破大作戦
どうすればフェリスというYouTuberより先にハピネスチャンネルの登録者数が150万人に到達するのか、考えに考えたが良い案は思い浮かばないまま、翌日も神野の家で頭を悩ませていた。
「どんな内容の動画を投稿するのが視聴者にとって需要がるのかを考えるのが一番だと思うんですよね」
「それは間違いないんだけどな。それだと今までと同じだよな」
「そうなんですよね……」
目を閉じて悩んでいる神野も可愛い。正直もうほとんど動画の内容の事とか頭に無い。俺の頭の中は神野の可愛い顔でいっぱいだ。幸せ。
「動画の内容は大事だけどさ、俺的には新しいファン層を狙うのが重要だと思う」
「と言うと?」
「ゲーム実況をすればゲーム好きが視聴するだろうし、ギターを弾いて弾き語れば歌とか楽器が好きな人が集まってくるだろ? だからこれまで神野が投稿した動画とは毛色の違う動画を投稿するのが一番なのではないかと」
「なるほど。ファン層についてはあまり意識してませんでした。どっちかと言うと私が楽しめる動画を投稿してたので」
神野の目線は投稿者で、俺の目線は視聴者だ。
俺の意見の方が神野の意見よりも視聴者が求めている答えを的確に導き出せるかもしれない。
「それっぽいこと言ってるけど結局どんな動画を投稿したらいいのかは思いついてないんだけどな」
「いえ、一緒に考えてくれてるだけでありがたいです。私一人では到底思い浮かばないと思うので」
俺は神野と同じ空間にいられるだけでありがたいよ。ずっと側に居させてください。出来れば後十年、いや、二十年。いや、死ぬまで一緒にいよう。
「あ、私気づきました」
「な、なんかいいアイデアが思いついたのか?」
閉じていた目を開き、何か閃いた様子の神野だが良いアイデアでも思いついたのだろうか。
「これじゃあ他力本願もいいところではあるのですが……」
「他力本願でも良いんじゃないか? 俺もなんでも協力するし」
思いついた事を言いやすいようにサポートするが、神野は言いづらそうに目を右往左往させている。
「以前義堂さんが投稿してくれた動画の反響が凄くて、エゴサーチとかすると意外とスミくんの人気が高いんですよ」
「へぇ。神野もエゴサーチとかするんだ」
「そ、それは今の話とは関係ありません」
頬を赤らめてある神野。ああ、慌てた神野も可愛い。
「すまん。それで、俺の人気が高いってのは?」
「そのままの意味です。スミくんのことを好きだって人が多いんですよ」
「意外だな。スミくんの事好きな奴なんているのか」
俺はただ動画の中でハピネスの手伝いをしているだけで、自分は好かれようとも人気になりたいとも思っていない。
そもそもエゴサーチすると言う発想が無かった。
「私も意外でした。だから、スミくんに関する動画を投稿するのもありなのでは無いかと思いまして」
意外でした、と言われるとそれはそれで悲しいんだけど……。とはいえ神野に悪気は無く、ただ正直な気持ちを言っただけなので許すとしよう。あ、今また傷付いたわ。
「俺に関する動画?」
「はい。深い内容はおもついていないのですが……例えば顔出しとか?」
「ーー顔出し!?」
俺は思わず机を両手で叩いて席を立つ。
「ちょ、ちょっと静かにしてください‼︎ 近所迷惑になるじゃないですか‼︎」
「ご、ごめん。驚きすぎて」
というかご近所って俺なんだけど。一階で物音立てても上の人にはそうそう響かないだろ。
「まあ私もちょっと無理なことを言いましたけど」
「ちょっとどころじゃないだろ。顔出しなんてしたら学校の奴らにバレるじゃないか。ハピネスくらいメイクとかして変装してれば大丈夫だろうけど」
ハピネスは俺が神野を学校で見ていてもハピネスだと気付かないレベルでメイクや変装をしてる。ハピネスは女子だからいいが、男子がメイクってのも気が引けるしな……。
「あ、俺閃いた」
「何かいい案が思い浮かびましたか」
「視聴者はもちろん、俺の顔が知りたいわけだろ? それなら……」
俺は不敵な笑みを浮かべ、誰がいるわけでもないのに神野に耳打ちをした。
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