大人気YouTuberのクラスメイトから黒子に指名された件

穂村大樹

第37話 両立のために

今日も俺は神野の動画撮影を手伝っていた。動画撮影は問題なく終了し、ハピネスモードが終了した神野は無表情で機材の片付けを進めている。

いつもなら片付けが終わり次第自宅に帰るところだが、今日の俺にはもう一つ目的があった。

俺は動画撮影の手伝いと友人関係の両立が出来ていない。
この言い方だと俺と神野があたかも付き合っている様に聞こえるが、それは天地がひっくり返ったとしても無いだろう。

神野の動画撮影を手伝いすぎて一真たちとの遊びに全く参加出来ていないのだ。
俺が急に遊びに参加しなくなったことで一真たちから不信感を抱かれていることは明白である。

そこで俺は動画撮影の手伝いを休んで遊びに行く了承を得る事にした。

「なぁ神野、ちょっとお願いがあるんだけど」
「なんですか?」
「今度動画撮影の手伝い休んで遊んできてもいいか?」
「いいですよ」
「え?」
「自分からお願いしておいて、え、とはどういうことですか」

俺が遊びに行っていいかとお願いしたら神野は「何言ってるんですか」とか「スミくんとしての自覚が足りません」と言って怒鳴ってくるのではないかと思っていた。
まあ感情に起伏の少ない神野に限って怒鳴ってくる事は無いだろうが、予想外に寛容な神野反応に驚きを隠せなかった。

「いや、即答されすぎてちょっと驚いた」
「遊びに行くというのは、お友達と遊びに行かれるということですよね?」
「おう。一真たちとな」
「そんなのいつでも行ってきてください」
「本当にいいのか?」
「当たり前じゃないですか。私は義堂さんに手伝っていただいているだけなので義堂さんを拘束する権利はありません」
「ま、まあ確かにそうだけど」
「むしろ私は義堂さんが予定があるって全く言わないので毎日暇なのかと……」

確かに俺から神野に予定があるとは言った事が無いので、俺が毎日暇をしていて何も予定も無いと思われても仕方がない。
それによくよく考えてみれば、神野から動画撮影の手伝いをお願いされた事はあるが強要された事は無い。俺が勝手な責任感で一真たちからの誘いを断り動画撮影を手伝っていただけだ。

最初から神野にお願していれば動画撮影の手伝いと友人関係を両立出来ていたのかもしれない。

「まあ一真たち以外と遊びに行ったりする予定は無いからな。暇みたいなもんなんだけど」
「すいません。私も最近は義堂さんに頼りっきりになっていたので気が回っていませんでした。義堂さんにも予定があるのは当たり前です」
「俺が神野の手伝いをしたいって思ったから手伝ったんだ。神野が責任を感じる必要は無いよ」
「いえ、私のせいです。これからは好きな時にいつでもご友人と遊びに行ってきてください」

俺のお願いがきっかけで神野はかなり責任を感じてしまっているようだ。

俺は俺の意思で神野の手伝いを優先していたのだから神野が責任を感じる必要は全く無いので、神野がこれ以上責任を感じないようフォローを入れる。

「神野は悪く無いからな。気にしにでくれ。友達には神野がハピネスだって事も神野と関わってるって事も言ってないからさ。ただたまには遊びに行かないと不審に思われそうなんだわ」
「そうですよね……。私がハピネスだって事、内緒にしてくれてありがとうございます」
「当たり前だろ。神野がハピネスだって知ってるのは俺だけって優越感もあるし出来るだけ神野を優先するよ」
「あ、ありがとうございます」

神野には遊びに行く了承を得たが、これで神野の手伝いが疎かになっては本末転倒だ。

神野の手伝いが疎かにならないよう適度に遊ぶ事にしよう。

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