大人気YouTuberのクラスメイトから黒子に指名された件
第33話 神野のいない学校
神野が風邪をひいた日の翌朝、俺は登校するため身支度をしていた。
俺と神野の登校時間は大体同じなので、神野が今日学校に来るのであればもう起床している時間なのだろうが、神野からの連絡は無い。
昨日の今日で劇的に神野の体調が回復するとも考えづらいので、恐らく今日は休みで時間を気にせず眠っているのだろう。
風邪をひいているのであれば出歩くこともないだろうし、神野の鍵はとりあえず俺の家に置いておくか……。
いや、それでは神野が病院に行こうとしても家から出られない。
病院に行かなければ風邪の回復が遅れてしまうかもしれないので、なんとかして神野に神野宅の鍵を渡さなければ。
紙袋か何かに入れてドアノブに掛けておくのもいいが、それでは誰かに侵入されてしまう危険がある。
一番安全なのは神野の家の郵便受けに入れておくことだろう。
郵便受けなら誰かに盗まれることもなく、侵入されることもない。
郵便受けの中に鍵が入っていることに気が付くかどうかが問題だが、鍵が必要となれば昨日置いていったメモに書いた俺の電話番号に電話をかけてくるだろう。
そして俺は神野の家の鍵を小袋に入れて郵便受けへと投函し家を出た。
学校に到着すると、俺の目は自然と神野の席へと送られる。
今日神野が学校に来ないことは分かっている。それなのになぜ俺の目線は神野の席に贈られているのだろうか。
「どこ見てんの?」
「おお⁉︎」
席に座り肘を突きながら神野の席を眺めていた俺の不意を突いて一真が喋りかけてきた。
「ちょ、まじ急に喋りかけないで心臓止まる」
「いや、急も何も何回も名前読んだんだけど」
「……あ、そう?」
一真に名前を呼ばれたことに全く気が付かないくらい神野の席を見てボーッとしていたというのか?
どうした俺、神野が風邪を引いていて心配なのは間違いないが誰もいない席をボケーと眺めていたって仕方がないじゃ無いぞ。
「海翔最近おかしく無いか? 明らかに俺たちとの誘いを断ってるし、今だって好きな子眺めるような顔してどうしたんだよ」
「ーーは⁉︎ 好きな子⁉︎ 別に好きとかじゃねえしな⁉︎ いや、好きといえば好きなんだけどね⁉︎」
確かに俺はハピネスが好きだ。動画で天真爛漫に笑うハピネスが好きだし一生懸命動画を撮影しているハピネスが好きだ。
だが、神野に対して好きだという感情を抱いたことは無い。
「もう何言ってるのか全くわかんねえよ。まあ海翔が急に誘いを断るようになった理由は無理して言わなくてもいいよ。言いたく無い事情があるんだろうし」
「……すまん」
「郁奈も千花も寂しがってるからさ。また放課後一緒に遊ぼうぜ」
「おう。また声かけるよ」
そう言って俺が放課後の誘いを断っている理由について無理に詮索することなく一真は去っていった。
俺だってあいつらに隠し事をす流のは不本意だ。出来れば全てを正直に話したいと思う。
ただ、それは神野を裏切る事になる。
神野だって自分の正体が学校で知られるのは嫌だろう。
そうなれば今まで通りの学校生活は送れないかもしれない。
二兎を追うものは一兎も得ず。
だが俺は、2足の草鞋になりたい。どちらも疎かにしない。そんな方法を考えなければ。
今はただ、俺に余計な詮索をせずそっとしておいてくれる、そんな友人の存在をとても大きく感じるのだった。
俺と神野の登校時間は大体同じなので、神野が今日学校に来るのであればもう起床している時間なのだろうが、神野からの連絡は無い。
昨日の今日で劇的に神野の体調が回復するとも考えづらいので、恐らく今日は休みで時間を気にせず眠っているのだろう。
風邪をひいているのであれば出歩くこともないだろうし、神野の鍵はとりあえず俺の家に置いておくか……。
いや、それでは神野が病院に行こうとしても家から出られない。
病院に行かなければ風邪の回復が遅れてしまうかもしれないので、なんとかして神野に神野宅の鍵を渡さなければ。
紙袋か何かに入れてドアノブに掛けておくのもいいが、それでは誰かに侵入されてしまう危険がある。
一番安全なのは神野の家の郵便受けに入れておくことだろう。
郵便受けなら誰かに盗まれることもなく、侵入されることもない。
郵便受けの中に鍵が入っていることに気が付くかどうかが問題だが、鍵が必要となれば昨日置いていったメモに書いた俺の電話番号に電話をかけてくるだろう。
そして俺は神野の家の鍵を小袋に入れて郵便受けへと投函し家を出た。
学校に到着すると、俺の目は自然と神野の席へと送られる。
今日神野が学校に来ないことは分かっている。それなのになぜ俺の目線は神野の席に贈られているのだろうか。
「どこ見てんの?」
「おお⁉︎」
席に座り肘を突きながら神野の席を眺めていた俺の不意を突いて一真が喋りかけてきた。
「ちょ、まじ急に喋りかけないで心臓止まる」
「いや、急も何も何回も名前読んだんだけど」
「……あ、そう?」
一真に名前を呼ばれたことに全く気が付かないくらい神野の席を見てボーッとしていたというのか?
どうした俺、神野が風邪を引いていて心配なのは間違いないが誰もいない席をボケーと眺めていたって仕方がないじゃ無いぞ。
「海翔最近おかしく無いか? 明らかに俺たちとの誘いを断ってるし、今だって好きな子眺めるような顔してどうしたんだよ」
「ーーは⁉︎ 好きな子⁉︎ 別に好きとかじゃねえしな⁉︎ いや、好きといえば好きなんだけどね⁉︎」
確かに俺はハピネスが好きだ。動画で天真爛漫に笑うハピネスが好きだし一生懸命動画を撮影しているハピネスが好きだ。
だが、神野に対して好きだという感情を抱いたことは無い。
「もう何言ってるのか全くわかんねえよ。まあ海翔が急に誘いを断るようになった理由は無理して言わなくてもいいよ。言いたく無い事情があるんだろうし」
「……すまん」
「郁奈も千花も寂しがってるからさ。また放課後一緒に遊ぼうぜ」
「おう。また声かけるよ」
そう言って俺が放課後の誘いを断っている理由について無理に詮索することなく一真は去っていった。
俺だってあいつらに隠し事をす流のは不本意だ。出来れば全てを正直に話したいと思う。
ただ、それは神野を裏切る事になる。
神野だって自分の正体が学校で知られるのは嫌だろう。
そうなれば今まで通りの学校生活は送れないかもしれない。
二兎を追うものは一兎も得ず。
だが俺は、2足の草鞋になりたい。どちらも疎かにしない。そんな方法を考えなければ。
今はただ、俺に余計な詮索をせずそっとしておいてくれる、そんな友人の存在をとても大きく感じるのだった。
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