大人気YouTuberのクラスメイトから黒子に指名された件
第25話 大勝利
戦いの火蓋は切って落とされた。
「よっ、ほれっ、そいや‼︎」
可愛らしい掛け声を繰り返しながらプレイしている神野は確かに上手い。
このままプレイしていれば負けてしまいそうだ。
そう、このままプレイしていれば。
実は俺、このゲームがめちゃくちゃ得意なのである。
どれくらい得意かというと、猿が気に登るのと同じくらい得意だ。
一真は超が付くほどのスカブラ上級者で初心者が一筋縄で勝てる相手ではないのだが、俺は1時間程のプレイでコツを掴み一真にも圧勝していた。
プレイ時間は少ないが、俺にはそれを補って余りあるスカブラのセンスがあった。
なので、正直本気を出せばハピネスなど取るに足らない相手なのである。
しかし、ここで俺が本気を出してハピネスが負けてしまえば罪悪感に苛まれるだろうし視聴者も喜ばないだろう。
そんな思いから俺は適度に手を抜き、ハピネスに10連敗を喫した。
「ふははははっ‼︎ スミくん弱いなぁ。こんなんじゃ私には一生勝てないよ。これじゃあ見てる視聴者さんも面白くないだろうから、次負けた方が勝った方の言うことをなんでも聞くってどう? あ、でも私があまりにも有利すぎるからスミくんは1回勝つだけでいいよ。私は10連勝したら勝ちってことで、どうだい?」
ハピネスは完全に調子に乗っている。
俺が手を抜いている事にも気付かず気分を良くしているようだ。
普段の神野からはハピネスの様な明るい性格は想像出来ないが、調子に乗っているすがたも普段とは真逆の姿だ。
まぁこれはこれで可愛いから許せるけど。
そろそろ本気でやってやるか。
俺は神野の提案に右手でOKポーズをして勝負に挑んだ。
「ふふん。その度胸だけは褒めて遣わす。よし、それじゃあ行くよ‼︎」
相変わらず調子に乗っているハピネスと俺の仁義なき戦いが始まった。
神野は上手い。中上級者程度の相手であれば圧倒的大差で勝利するだろう。
しかし、神野の攻撃はワンパターンなのだ。
そのパターンさえ読み切ってしまえばそれを回避するだけなので非常に楽な戦いとなる。
「よっ、ほっ、それっ……あれ、なんかスミくん強くない?」
神野は今の俺を強いと感じたようだが俺はまだ何も仕掛けていない。ただハピネスの攻撃を避けているだけだ。
そろそろこっちから行かせてもらおう。
「え、ちょっとなに⁉︎ やばっ……てああぁぁぁぁ‼︎」
そして俺はハピネスが使っているキャラを場外へと吹き飛ばし、勝利を勝ち取った。
「……えーっと、何かの間違い……かな?」
これは何かの間違いではなく現実だと俺は首を横に振る。
「はは、はは、そ、そんな、そんなことって……」
あまりに急な出来事で思考が停止しているハピネスを見て、手を抜いていた事を申し訳なく感じた俺は俯いているハピネスの肩を叩き、人差し指を立てる。
「……え、もう一回いいの?」
少し表情を明るくしたハピネスの言葉に俺は深く頷いた。
「ほ、本当に?」
俺はもう一度深く頷く。
「よぉし泣きの1回だ‼︎ 次こそ勝つ‼︎」
泣きの一回で息を吹き返したハピネスだったが、手は抜かないでおこうと決めた俺は次の試合でもハピネスを圧倒し、勝利を掴んだのだった。
「な、な、にやぁぁぁあにぃぃぃぃ⁉︎ 負けたの私⁉︎」
俺は三回首を縦に振り、ハピネスに負けたという事実を知らしめた。
「そ、そんなに何度も頷いて追い討ち⁉︎ て言うかまさか最初は手を抜いてたの⁉︎」
その言葉に狼狽えた俺は黒子の特権、黙り込みを発動させた。
いや、ずっと発動してるけど。
「コラ‼︎ 何か反応しなさい‼︎ うんとかすんとか言いなさいよ‼︎」
それダメだから。それしたらもう黒子の意味なくなっちゃうから。
「……はぁ。まぁ負けは負けだからね……。それじゃあそのうちまた私がスミくんの言うことを聞いた時の動画を投稿しまぁす……。それじゃあまたねぇー……」
あからさまに気力を失ったハピネスはテンションガタ落ちのまま撮影を止めた。
過去に見た事が無い程落ち込むハピネスの姿に、俺はかける言葉を見失っていた。
「よっ、ほれっ、そいや‼︎」
可愛らしい掛け声を繰り返しながらプレイしている神野は確かに上手い。
このままプレイしていれば負けてしまいそうだ。
そう、このままプレイしていれば。
実は俺、このゲームがめちゃくちゃ得意なのである。
どれくらい得意かというと、猿が気に登るのと同じくらい得意だ。
一真は超が付くほどのスカブラ上級者で初心者が一筋縄で勝てる相手ではないのだが、俺は1時間程のプレイでコツを掴み一真にも圧勝していた。
プレイ時間は少ないが、俺にはそれを補って余りあるスカブラのセンスがあった。
なので、正直本気を出せばハピネスなど取るに足らない相手なのである。
しかし、ここで俺が本気を出してハピネスが負けてしまえば罪悪感に苛まれるだろうし視聴者も喜ばないだろう。
そんな思いから俺は適度に手を抜き、ハピネスに10連敗を喫した。
「ふははははっ‼︎ スミくん弱いなぁ。こんなんじゃ私には一生勝てないよ。これじゃあ見てる視聴者さんも面白くないだろうから、次負けた方が勝った方の言うことをなんでも聞くってどう? あ、でも私があまりにも有利すぎるからスミくんは1回勝つだけでいいよ。私は10連勝したら勝ちってことで、どうだい?」
ハピネスは完全に調子に乗っている。
俺が手を抜いている事にも気付かず気分を良くしているようだ。
普段の神野からはハピネスの様な明るい性格は想像出来ないが、調子に乗っているすがたも普段とは真逆の姿だ。
まぁこれはこれで可愛いから許せるけど。
そろそろ本気でやってやるか。
俺は神野の提案に右手でOKポーズをして勝負に挑んだ。
「ふふん。その度胸だけは褒めて遣わす。よし、それじゃあ行くよ‼︎」
相変わらず調子に乗っているハピネスと俺の仁義なき戦いが始まった。
神野は上手い。中上級者程度の相手であれば圧倒的大差で勝利するだろう。
しかし、神野の攻撃はワンパターンなのだ。
そのパターンさえ読み切ってしまえばそれを回避するだけなので非常に楽な戦いとなる。
「よっ、ほっ、それっ……あれ、なんかスミくん強くない?」
神野は今の俺を強いと感じたようだが俺はまだ何も仕掛けていない。ただハピネスの攻撃を避けているだけだ。
そろそろこっちから行かせてもらおう。
「え、ちょっとなに⁉︎ やばっ……てああぁぁぁぁ‼︎」
そして俺はハピネスが使っているキャラを場外へと吹き飛ばし、勝利を勝ち取った。
「……えーっと、何かの間違い……かな?」
これは何かの間違いではなく現実だと俺は首を横に振る。
「はは、はは、そ、そんな、そんなことって……」
あまりに急な出来事で思考が停止しているハピネスを見て、手を抜いていた事を申し訳なく感じた俺は俯いているハピネスの肩を叩き、人差し指を立てる。
「……え、もう一回いいの?」
少し表情を明るくしたハピネスの言葉に俺は深く頷いた。
「ほ、本当に?」
俺はもう一度深く頷く。
「よぉし泣きの1回だ‼︎ 次こそ勝つ‼︎」
泣きの一回で息を吹き返したハピネスだったが、手は抜かないでおこうと決めた俺は次の試合でもハピネスを圧倒し、勝利を掴んだのだった。
「な、な、にやぁぁぁあにぃぃぃぃ⁉︎ 負けたの私⁉︎」
俺は三回首を縦に振り、ハピネスに負けたという事実を知らしめた。
「そ、そんなに何度も頷いて追い討ち⁉︎ て言うかまさか最初は手を抜いてたの⁉︎」
その言葉に狼狽えた俺は黒子の特権、黙り込みを発動させた。
いや、ずっと発動してるけど。
「コラ‼︎ 何か反応しなさい‼︎ うんとかすんとか言いなさいよ‼︎」
それダメだから。それしたらもう黒子の意味なくなっちゃうから。
「……はぁ。まぁ負けは負けだからね……。それじゃあそのうちまた私がスミくんの言うことを聞いた時の動画を投稿しまぁす……。それじゃあまたねぇー……」
あからさまに気力を失ったハピネスはテンションガタ落ちのまま撮影を止めた。
過去に見た事が無い程落ち込むハピネスの姿に、俺はかける言葉を見失っていた。
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