大人気YouTuberのクラスメイトから黒子に指名された件
第21話 少しの油断
俺の家から学校までは坂道を登って徒歩10分程度で到着する。
俺が通う学校は小高い丘の上にあり、教室から見える景色をボーッと眺めるのが趣味のようなものになっている。
いつも通り自宅を出て坂道を登っていると、前方に神野の姿が確認出来た。
学校に近づけば俺から離れていくとはいえ、もう俺の方から声をかけてもいいくらいの関係にはなったのではないかと思った俺は自分から神野に声をかけることにした。
「よっ」
俺が声をかけると神野はビクッと肩を震わせ、その後で俺の方を振り向く。
「……おはようございます」
俺の声かけに喜ぶでもなく嫌な顔をするでもなく、驚いたのを無かったことにして淡白な挨拶を返してきた。
「いや、今びっくりしてただろ」
「はぁ。私の学校での状況見てたら分からないんですか? 高校生になってから通学路で声をかけられるのが初めてなんです。驚くのも無理ないじゃないですか……」
そ、それは悲しい……。
どうやら俺は意図せぬところで神野の地雷を踏んでしまったようだ。
というかこれまで毎日登校してて神野が同じアパートに住んでるってよく気付かなかったよな。
あ、そういえば俺、登校中もヘッドホンしながらハピネスの動画ずっと見てたわ。そりゃ気づかんわ。
「昨日投稿してた動画、あんな内容だったなんて聞いてないぞ」
「当たり前じゃないですか。そういう趣旨の動画なんですから」
……まあそりゃそうだ。
神野が言う通り、「じゃあいたずらしかけるね‼︎」と言って動画を撮影してしまっては動画の目的は果たせない。
したり顔でこちらを見つめてくる神野に一瞬イラッとしたが、したり顔の神野があまりにも可愛い。
その可愛さ俺の心は癒された。
「そりゃそうだけどさ……」
「結構反響ありましたよ。スミくんをいとこって言うことで男だとしても如何わしくなく、尚且つスミくんがまんまと騙されてくれたので視聴者の方々には楽しんでもらえたようです」
俺としては腑に落ちない部分も多いが、神野がいつもより満足げに胸を張っているのでこれ以上は突っ込まないことにした。
「まぁそうだな。反応が良いのは嬉しいことだ」
「はい。それじゃあ私は先に行くので」
そして神野は歩くスピードを上げ、俺を置き去りにしてせかせかと歩いて行ってしまった。
そこまで他の生徒に俺と喋っているところを見られたくないのだろうかとショックを受けるが、俺自身神野と話しているところを千花や一真、郁奈に見られる訳にはいかないので利害は一致している。
大きなため息を吐きながらも、そう考えればすぐに忘れることが出来た。
「まぁいっか」
「なにがまあいっかなの?」
「おお⁉︎」
驚きの声を上げながら振り向くと、俺の後ろには幼なじみの千花が不思議そうな顔をして立っていた。
「そんなにびっくりしなくてもいいのに」
「なんだ千花か。ごめん、ちょっと気を抜いてたから」
「そっか。というかかいくん今神野さんと話してなかった?」
――⁉︎
俺と神野が話してたところを見られてたのか⁉︎
いや、見られたからといってやましいことは何一つ無いのだが、神野がハピネスであると言う事実を守り抜くためには俺と神野が話していたことを知られる訳にはいかない。
「俺と神野が話すわけないだろ? ただでさえ人と喋ってるとこなんて見たことないのに。さっき俺を追い抜かしていったから、その時たまたま喋ってるように見えただけだろ」
「ふーん。そっか。ならいいんだけど」
いや、何がいいのか分からないけど。
今回はなんとか気付かれずに済んだようだが、いつどこで誰に見られるか分からない。
これからは学校付近で神野と会話するのは厳禁だな。
「それよりかいくん最近放課後何してるの? 忙しいみたいだけど」
「え⁉︎ と、特に何もしてないよ。疲れてるから家でゆっくりしてる」
「そっか。誰だって疲れるときはあるよね」
……なんとか乗り切れたか?
流石にここ最近一真や千花からの誘いを断り続けているので怪しまれるのも無理はない。
神野の手伝いも上手くやらなければ、千花達との関係に亀裂が走る可能性もある。
神野の手伝いをすると決めた以上、油断せず気を引き締めて行動しなければならないと心に誓うのだった。
俺が通う学校は小高い丘の上にあり、教室から見える景色をボーッと眺めるのが趣味のようなものになっている。
いつも通り自宅を出て坂道を登っていると、前方に神野の姿が確認出来た。
学校に近づけば俺から離れていくとはいえ、もう俺の方から声をかけてもいいくらいの関係にはなったのではないかと思った俺は自分から神野に声をかけることにした。
「よっ」
俺が声をかけると神野はビクッと肩を震わせ、その後で俺の方を振り向く。
「……おはようございます」
俺の声かけに喜ぶでもなく嫌な顔をするでもなく、驚いたのを無かったことにして淡白な挨拶を返してきた。
「いや、今びっくりしてただろ」
「はぁ。私の学校での状況見てたら分からないんですか? 高校生になってから通学路で声をかけられるのが初めてなんです。驚くのも無理ないじゃないですか……」
そ、それは悲しい……。
どうやら俺は意図せぬところで神野の地雷を踏んでしまったようだ。
というかこれまで毎日登校してて神野が同じアパートに住んでるってよく気付かなかったよな。
あ、そういえば俺、登校中もヘッドホンしながらハピネスの動画ずっと見てたわ。そりゃ気づかんわ。
「昨日投稿してた動画、あんな内容だったなんて聞いてないぞ」
「当たり前じゃないですか。そういう趣旨の動画なんですから」
……まあそりゃそうだ。
神野が言う通り、「じゃあいたずらしかけるね‼︎」と言って動画を撮影してしまっては動画の目的は果たせない。
したり顔でこちらを見つめてくる神野に一瞬イラッとしたが、したり顔の神野があまりにも可愛い。
その可愛さ俺の心は癒された。
「そりゃそうだけどさ……」
「結構反響ありましたよ。スミくんをいとこって言うことで男だとしても如何わしくなく、尚且つスミくんがまんまと騙されてくれたので視聴者の方々には楽しんでもらえたようです」
俺としては腑に落ちない部分も多いが、神野がいつもより満足げに胸を張っているのでこれ以上は突っ込まないことにした。
「まぁそうだな。反応が良いのは嬉しいことだ」
「はい。それじゃあ私は先に行くので」
そして神野は歩くスピードを上げ、俺を置き去りにしてせかせかと歩いて行ってしまった。
そこまで他の生徒に俺と喋っているところを見られたくないのだろうかとショックを受けるが、俺自身神野と話しているところを千花や一真、郁奈に見られる訳にはいかないので利害は一致している。
大きなため息を吐きながらも、そう考えればすぐに忘れることが出来た。
「まぁいっか」
「なにがまあいっかなの?」
「おお⁉︎」
驚きの声を上げながら振り向くと、俺の後ろには幼なじみの千花が不思議そうな顔をして立っていた。
「そんなにびっくりしなくてもいいのに」
「なんだ千花か。ごめん、ちょっと気を抜いてたから」
「そっか。というかかいくん今神野さんと話してなかった?」
――⁉︎
俺と神野が話してたところを見られてたのか⁉︎
いや、見られたからといってやましいことは何一つ無いのだが、神野がハピネスであると言う事実を守り抜くためには俺と神野が話していたことを知られる訳にはいかない。
「俺と神野が話すわけないだろ? ただでさえ人と喋ってるとこなんて見たことないのに。さっき俺を追い抜かしていったから、その時たまたま喋ってるように見えただけだろ」
「ふーん。そっか。ならいいんだけど」
いや、何がいいのか分からないけど。
今回はなんとか気付かれずに済んだようだが、いつどこで誰に見られるか分からない。
これからは学校付近で神野と会話するのは厳禁だな。
「それよりかいくん最近放課後何してるの? 忙しいみたいだけど」
「え⁉︎ と、特に何もしてないよ。疲れてるから家でゆっくりしてる」
「そっか。誰だって疲れるときはあるよね」
……なんとか乗り切れたか?
流石にここ最近一真や千花からの誘いを断り続けているので怪しまれるのも無理はない。
神野の手伝いも上手くやらなければ、千花達との関係に亀裂が走る可能性もある。
神野の手伝いをすると決めた以上、油断せず気を引き締めて行動しなければならないと心に誓うのだった。
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