大人気YouTuberのクラスメイトから黒子に指名された件

穂村大樹

第14話 友達大作戦

放課後、俺は神野を学校近くのファミレスに呼び出した。

現在俺の前に座っている神野は訝しむ様な目で俺を覗き込んでいる。

「なんの用ですか? 学校付近のファミレスであなたと一緒にいると変な噂が立つかもしれないですし、早く帰って動画の撮影をさせていただきたいのですが」
「まあそう言わずにさ。ちょっと待ってくれよ」

俺は今日、委員長にこのファミレスに来るようお願いをした。
その事実を神野には伝えていない。

神野は友達が欲しいというような発言をしていたが、一匹狼わんふという変なあだ名のせいで友達が出来ないらしい。
しかし、みんなと仲良く出来る委員長なら、ハピネスファンである委員長なら神野と仲良くなれるはずだ。

委員長も女の子のハピネスファンの友達が欲しいと言っていたので二人の利害は一致している。

神野はハピネスファンではなくハピネス本人だが、神野をハピネスファンってことにして、ハピネスの魅力をみんなで語り合えば良いハピネス仲間になれそうだ。

しばらくして委員長がファミレスに入店して来たが、神野は委員長に背を向けているため委員長の存在に気付いていない。

「どうしたんですか? 遠くを見てニヤニヤして。気持ち悪いです」
「気持ち悪いってお前な……。そこまで面と向かって言われると流石にショックだよ?」
「……ご、ごめんなさい」

いや、謝るんかい。めっちゃ素直やんこの子。強気な態度も学校生活の中で作り出された偽りの姿なのだろうか。

そして俺は手招きをして委員長を俺たちが座っている席に呼んだ。

「何してるんですか?」

神野は未だに委員長の存在に気がついていない様子だが、委員長は俺たちの席のすぐ後ろにやってきた。

「はぴる〜ん‼︎ 義堂くんお疲れ〜」
「はぴるーん。おつかれ」

聞き覚えのある挨拶に後ろを振り向いた神野はついに委員長の存在に気がついた。
その瞬間、神野は硬直して俺の目を一直線に見つめている。

「って、え、神野さん⁉︎ なんで神野さんがここに?」

神野は委員長からそう質問をされても硬直したまま言葉を発することも身体をピクリと動かすこともせず、俺の方を見つめている。

「聞いて驚け委員長、実は神野もハピネスファンなんだ」
「……はぇ?」

俺の発言を聞いた神野の口からは気の抜けた様な情けない声が聞こえる。

「え、神野さんがハピネスファン……? ええええぇぇええ⁉︎ 本当に⁉︎」
「あぁ。本当だ。な?」

俺の問いかけに困惑した表情を見せる神野だが、状況を理解した神野はなんとか我に戻ったようで、コクッと頷いた。

「えー‼︎ すっごい嬉しい‼︎ そうだったんだ‼︎ 神野さん、クールでかっこいいなぁって思ってたんだけど話しかけづらくて……。今まで話せてなかったけどこれからたくさんハピネスの話しよ‼︎ よろしくね、神野さん‼︎」
「よ、よろしくお願いします」

緊張して表情が強張ってはいるが、友達が出来たと言える状況に心なしか神野は嬉しそうな表情をしている様な気がした。

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