大人気YouTuberのクラスメイトから黒子に指名された件

穂村大樹

第9話 日常の異変


神野がハピネスだということを知った翌日の朝、結局昨日も夜更かしをしてしまった俺は目を擦りながら登校していた。

夜更かしはいつものことなのだが、昨夜はいつも以上に目が冴えており眠ることが出来なかった。

夜更かしをするつもりは無かったが、本物のハピネスと会って会話をして、しかもハピネスは同級生で自分の隣の部屋に住んでいたという事実を知って熟睡出来るわけがない。

それに、俺とハピネスの関係は昨日出会っただけの関係では終わらない。
俺はハピネスの黒子としてハピネスに尽くすことになったのだ。

これからもハピネスに会えると考えるといつも動画を見ている時の何十倍も気持ち悪いニヤニヤを浮かべてしまっていた。

「何をニヤニヤしているんですか?」
「おおっ⁉︎」

唐突に後ろから声をかけて来た人物、それは俺が愛してやまないハピネス、いや、神野だった。
ニヤニヤしているのを一番見られたくない相手に見られてしまったな……。

「すいません。そんなに驚かせるつもりは無かったのですが」
「べ、別に驚いてないけどな⁉︎」
「……そうですか」

何やら冷たい視線とため息を感じたが、あまり気にしていると自分が辛いだけなのでやめておこう。

それにしても、神野の方から俺に声をかけてくるとは思わなかったな。昨日の出来事が無ければ信じられないことだ。
一匹狼わんふというあだ名まで付けられるほどの美少女と俺が関わるなんて普通ならあり得ない。

というか、神野がハピネスってのが未だに信じられない。

今も俺に話しかけて来ているテンションは相当低い。こんな奴が動画の中ではキラキラと輝く笑顔を振りまき、人々を笑顔にしていると誰が想像出来るだろうか。

「今日はどうしたらいい? 黒子って言われても何したらいいか全くわかんないんだけど」
「とりあえず私の家に来てください。今日はさっそく動画を撮影するので」

とりあえず、「おう」と返事をしたはいいが、ハピネスの家に招かれるという状況に違和感を感じずにはいられない。

とはいえ、流石に昨日は神野がハピネスだという事実に腰を抜かしたが1日経過すれば意外と冷静になるもんなんだな。

今神野が横に居る状況も普通ならこんなに平常心で歩いていられるはずがない。

こうして歩いてると彼女と2人で歩いているかのような……。

「それでは私は先に行くので。また放課後」
「お、おう。また」

神野が横に居ることに幸福を感じていたところに急なフェードアウトは若干堪える。
そりゃまぁ確かに、2人で学校まで歩いていけば皆に何を勘違いされるかわからないしこうする他無いのだろう。

それにしたってここまで潔く校門の直前で俺から離れていかれると傷つくよマジで。

でもまぁ、放課後に神野に会えると考えたらこの悲しさを含めたとしても大いにプラスになるけどな。

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