チート(現代知識)×チート(魔法)×チート(武術)はチート∞(天災級)?!

もるもる(๑˙ϖ˙๑ )

第74話(みんなで旅行 2日目 宿場町)

 宿場町に近付いていくと何か慌しく物々しい雰囲気になっているのを感じる。そして町に向かう僕らの馬車を冒険者風の一団が呼び止める。

「移動しているところを申し訳ないんだが、アインツ方面から来たんだよな?」
 リーダー風の男の人が御者さんに問うてくる。

「え、えぇ。そちらから来ました」
「とすると、あの天変地異の竜巻を目撃していないってことはないよな?」
 御者さんはどう答えたらいいのか判らず、オドオドしながら馬車の中にいる僕たちの方をチラチラみる。

「横からすまない。竜巻の件だが確かに目撃した」
 カイゼルさんが馬車から飛び降りて、冒険者の一団に近付いていく。

 カイゼルさん曰く、僕らが宿場町を目指していると山賊が襲ってきて護衛冒険者と交戦。護衛冒険者が有利に戦いを進めていたのだが、山賊がどこから持ち出したか判らない古代遺物アーティファクトを使用して巨大な竜巻を発生させた。
 決死の覚悟の冒険者が僕達を逃がしてくれたが、その後の消息は不明になってしまった……と当たり前のように嘘の報告をする。

「そうか。君たちも大変だったんだな。宿場町でゆっくり休むと良い」
 冒険者さんはカイゼルさんの言葉を信用したのか僕らを気遣った言葉をかけてくれて、見送ってくれた。そして冒険者さんたちがそのまま竜巻が発生した方角へ向かって行くのを見送る。

「本当だって、二つの竜巻がぶつかってたんだ!」
「いやいや、一つだって稀なのに、二つも出来るなんて」
「あれは竜神様のお力じゃ?」
「竜同士の戦いだったんじゃないか?」
「いやいや大魔導士様の魔法に違いない」
「いや古代遺物アーティファクトによるものだ!」
 僕らが宿場町に入ると、道行く人々が自分の推測で色々な竜巻の意見を交わして、そこらじゅうで激論が発生している。そんな喧騒の中を、張本人の僕達は妙に肩身の狭い思いをしながら宿に向かうのだった。

 宿について荷物を部屋に下ろし、一息ついたところで男部屋に女の子達が入ってくる。

「さてと、やっと落ち着いたところで……アルカード君、結局君は何をしたんだい?」
「えっと、冒険者さんが強かったので、とりあえず武器を持つ手を吹き飛ばそうと、一撃入れたら、あぁなっちゃった」
 カイゼルさんが額を二本の指で押さえて、むむむと悩む。

「右手を吹き飛ばす技で竜巻が生まれるなんて古今東西聞いた事がない。そもそも武術の域を超えている。そういえば入学試験の時に正拳突きで山の頂上を吹き飛ばした輩がいると聞いたな。冗談だと思って一笑に付していたのだが、君がやってたんだな……」
「でも入学試験の時は竜巻なんて起きてなかったわ」
「あの時は貫く力で、今回は喰らい尽くす力だったから違うのかもしれない」
 僕は思い出しながらみんなに伝える。

「つ、貫く力って、炎弾ファイアバレットに使っている文節ワード?」
「うん。イメージ的にはそれと一緒だよ」
「じゃ、じゃぁ、喰らい尽くす力って?」
「うーん。空間ごとパクッって食べちゃう感じで、後には何も残らないイメージなんだよなぁ。今回は冒険者さんが強かったから、このままだとマズイと思って、とりあえず利き手を消しちゃえば何とかなると思ったんで使ってみたら、あぁなっちゃった」
「うーん。た、多分。きょ、虚無魔法……だと思う。あ、あまり、文献はなくて、す、凄く少ないけど、事例があって、忌まわしい加護と……言われてます」
 キーナさんが話を聞きながら事例を思い出してくれる。

「全てを喰らい尽くす力って?そんな危険なもの忌避されるよなぁ。まぁ、アルがそれを持ってても何とも思わんけどな。友人だしな!」
 オスローが親指を立ててウィンクする。僕はいい友達を持ってよかったと心の底から思う。

「ともかく、その喰らい尽くす力とやらは、封印すべき技だろう。私の予想だが、その力はあらゆる物理/魔法防御を無視して、空間ごと切り取る技のような気がしている。まぁ世の中に出してはいけない系の技だな。で、何で喰らい尽くす力を使ったら竜巻が発生したんだ?」
「きょ、虚無の力は、空間ごと切り取る技で……切り取られた空間が元に戻ろうと、周りを吸い込んで竜巻が発生した……んだと思う」
「なるほど。しかし聞くほどに恐ろしい系統の力だ。避けれなかったらあらゆる防御を貫通してダメージを与え、避けたとしても虚無空間に引き寄せられてしまったらダメージか。しかもダメージが致命傷レベルだとはね。本当に君は規格外だなぁ」
 僕以外のみんなが納得したように頷くのを見て、僕は何だかやるせない気持ちになってしまった。

「まず一つ目の竜巻に関しては何となく判った。で、二つ目の竜巻は何なんだ?」
 僕への追求はまだ終わりそうにないみたいだった。


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