チート(現代知識)×チート(魔法)×チート(武術)はチート∞(天災級)?!

もるもる(๑˙ϖ˙๑ )

第70話(みんなで旅行 2日目 想定外の出来事)

 いつもの習慣でまだ暗いうちに目が覚めたが、いつもみたいに訓練できる環境ではないし、慣れない移動になるので、仕方ないのでベッドで横になりながら算術魔法を起動する。
<エグゼキュート ディティールサーチ ワイドマップ エネミー>

 僕の右目に周辺地図と様々な点が表示される。この辺は緑色の点で敵性がない生物が多いようだが、この先の分岐点を過ぎると橙色の点が多く見られる。
 これは僕らにたいして明確な敵性はないが、近付くとこちらを標的にしそうな敵性生物のようだ。

 やはり分岐点を過ぎたら警戒の為に<ディティールサーチ>を常時維持した方がよさそうだ。

 日が昇る事になると、皆も目が覚めてモゾモゾと動き始める。僕はベッドから降りると、顔を洗いに中庭の井戸に向かう。冷たい水で顔を洗うと本格的に目が覚めると同時にお腹が空いてくる。

 朝食までには少し時間があるから、馬車を曳く馬の様子を見に行こうと馬房に向かう。馬は十分な休養と水と食事を与えられていたからか、すこぶる元気そうなので、僕は近付いて首筋を撫でると嬉しそうに目を細める。そんな風にしていると、馬房の外で話し声がしている気がしたので、そっと近寄り聞き耳を立てる。

「……分岐……」
「……に……連……」
「……様の……辱を……す」

 声が小さくてうまく聞き取れない。もっと聞き取ろうと近付こうとしたら、床に落ちていた牧草を掬い上げるフォークを蹴っ飛ばしてしまい、少し大きな音が立つ。

「……っ!」

 慌てたような呼気が聞こえると、走って遠ざかる足音がしたので、窓から足音が遠ざかっていく方を見ると男っぽい影が人ごみにまぎれるのを目の端に捕らえた。既に結構な数の人が活動を始めているから、<サーチ>魔法でも捕らえられないだろうと考えた僕は何か嫌な予感がするなぁと思いながら、朝食を取りに宿屋の食堂へ移動した。

 食事がてらさっきの件をみんなに話すが、その人たちの真意も僕らを標的にしているかも分からないので手の打ちようがないし、気にし過ぎではないかとみんなに言われたので、あまり気にしないことにした。

 朝食が終わって部屋から荷物を持って外に出ると、既に馬車の準備は終わっており昨日の冒険者の人達も集合していた。僕らも馬車に乗り込むと、ヒルデガルドに向けて馬車が出発する。

 昨日の話どおり、僕とオスローは馬車の中で魔法の訓練を行ってみる。事象の具現化の訓練としては、存在しないものを魔力で具現化する訓練が適切で、僕も石を作る魔法を龍爺に色々教えてもらいながら習得したものだ。

 空気中には石の素材となる物質が存在しないため、具現化するためには魔力を使って明確なイメージを元に物質を作り出す必要がある。

 炎や風などは物質が存在するわけではないのでイメージがしやすく具現化も比較的容易いが氷や石などは、明確な物質を作り出さなければならないので失敗が多い。

 僕が参考までに石を作り出すと、オスローはその石を見ながらイメージを固めて具現化にチャレンジする。中々うまくいかないが、ずっと続けていると昼頃には小さな石の欠片を作る事に成功する。

 オスローが苦心していたが、分岐点へ到着する頃にはながら何とか魔法を成功させていた。

 ここから北西に進めばヒルデガルド地方。北に進むとツェーリの実家があるヨルムガルド地方、南西に進むとアインルウムの首都であるロイエンガルド地方へ進める。

 僕らの目的地はヒルデガルドなので、馬車はそのまま北西へと進んでいく。高地が多くを占める地方だけに、少しずつ上り坂が多くなってきて、周りの木々も少しずつ様変わりしていく。
 また道を進むほど周りの人達も減っていき、分岐点と次の宿場町の中間地点当たりまで来ると前後を見ても人影が見えないほど、道行く人がまばらになっていく。

 左右に深い林が立ち並ぶ道を進んでいると、前の馬車が急停止したので、僕らの馬車も急制動をかけてぶつからないように止まる。馬車に乗っていた僕らは激しく揺られて、馬車の中に倒れこむ。

「どうかしたのか?」
 カイゼルさんが御者に声をかける。

「前の馬車の車輪が溝にはまったみたいです」
 御者が状況を説明する。僕が隙間からのぞいてみると、確かに前の馬車が少し傾いているように見える。そして冒険者さん達が馬車を降りて、車輪を確認しているようだ。僕らも何か手伝える事がないかと、馬車を降りると冒険者さんに近付いていく。

「何か手伝える事がありませんか?」
「あぁ、君達か。どうやら車輪が溝にはまってしまったみたいだから、馬車を持ち上げて溝から出したのだが、馬車に乗っている荷物を一旦下ろしてもらえると助かる」
「わかりました」
 僕が話しかけると冒険者さんからお願いされたので、前を行っていた馬車の荷台に上がろうとする。その瞬間に首筋に急な殺気を感じたので、身体をかがませる。

 僕の首があったところを銀色の刃が走り抜ける。身体をかがませなければ、僕の首は一撃で切り落とされていたであろう。
 僕が前方に回転しながら距離をとると、長剣を水平薙ぎに振り切った姿勢の冒険者さんがいた。

「な、なにをするんですかっ!!」
「今のを避けるか……が、悪いが死んでもらう。こちらもビジネスなんでな」
 僕が大声をあげると無慈悲な言葉と共に冒険者さんが斬りかかって来る。

ピーーーーーーーーーーーーーッ!!

 甲高い音が空に抜けていく。どうやら冒険者の一人が鏑矢を放ったらしい。

「た、多分。え、援軍が、きますっ!!」
 馬車の中にいたキーナさんがみんなに声をかける。

 戦士風の冒険者は僕の足止め、斥候の人は増援への合図と牽制。もう一人の戦士風の冒険者は後ろの馬車の前に陣取っていち早く反応したウォルトさんの足止め、その支援に魔法使いといった形で僕達は押さえ込まれていた。

 4人に梃子摺っている内に、林の中から大勢の気配が飛び出してくるのだった。


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