チート(現代知識)×チート(魔法)×チート(武術)はチート∞(天災級)?!

もるもる(๑˙ϖ˙๑ )

第69話(みんなで旅行 1日目)

 馬車はアインツを出ると北西に伸びる街道を進む。馬車で1日進んだ場所あたりには自然に宿場町が出来ているため、基本的に野営は不要にだ。

 また今回はエストリアさんの家族が宿場町の宿を手配してくれているので、宿の心配もなく、僕らは気兼ねなく行動する事ができる。

 一つ目の宿場町までの街道は人通りが多く、治安が良い状態なので盗賊や魔物は少なくて馬車や人とすれ違ったり追い越したりしながら進んで、何事もなく宿場町に到着する。

 この先に3つの州へ分岐する地点があり、そこを過ぎると人通りがぐっと減る。そうすると盗賊や魔物と遭遇する確立が上がっていくので注意が必要だ。そのため、アインツ周辺の宿場町では冒険者ギルドが活発で、冒険者達は数多くの護衛任務を請け負える為、登録者数も多いようだ。
 今回の宿場町も冒険者が多く、町に入って宿に着くまでの間にも多くの冒険者を見かけることができた。

 宿に着き馬車を預けると、護衛をしていた冒険者さん達は冒険者の店に繰り出して行き、僕らは男女別々の4人部屋をあてがわれたので、それぞれの部屋に分かれて少しの間、寛いでいた。

 しかし馬車に長時間乗っていて身体が固まっていたので、軽く動いてほぐしたいなぁと考えているとオスローが同じ気持ちになったのか「行くか?」と誘ってきたので一緒に宿屋の中庭を借りて、型や組み手を行う事にした。

「不謹慎だけどさ。魔物の一体や二体出てくれないかなぁ。道中暇すぎてたまらない」
 オスローが軽口を叩きながら上段蹴りを繰り出す。

「そんな事言うと、本当に出たりするから口にしない方がいいよ」
 僕は軽口を軽く返しながら、左手で受けて、そのまま軸足を払う。

「でもなぁ……あと二日も馬車に乗りっぱなしだからなぁ」
 オスローは飛び上がりながら逆に回転して後ろ回し蹴りを放ちながらぼやく。

「確かに暇は暇なんだけどさ。そういやキーナは魔法の事を考えていたから楽しそうだったよ」
 身体を後ろにそらして蹴りを見切って、無防備な背中に掌底を叩き込む。オスローは左手で掌底を受け止めると、そのまま手首を極めて投げを打つ。

「魔法か、確かにそれなら馬車の中でも出来るな」
「明日はそうしてみる?」
 自ら飛んで極められた関節を解き、着地と同時に上段蹴りを放つと、オスローは左手でブロックした。

「あ、貴方達ね……何て高度な攻防をしながら、当たり前のように雑談してるのよ?」
 いつの間にかエストリアさん達が中庭に下りてきて、僕らの行動を観察していたらしい。

「ジョギングしながら話しているようなもんだろ?」
 オスローが何気なくそう答えると、こめかみを押さえながら溜息をつく。

「……まぁいいわ。私達はこれから露店でも見て回ろうと思うんだけど」
「アルとオスローも一緒するのだっ!」
 エストリアさんに続いて翠が元気よく誘ってくるので、散歩がてら付き合うよと返す。

 宿場町の中央通りの中心あたりには噴水がある広場があり、その周辺にいろいろな露店が出ている。食べ物だけではなく、小物なども多く売っているようだ。とはいえアインツからそんなに離れていないので、珍しいものは少ないように感じる。

 翠は小物より、串焼きの方に興味があるみたいで、そちらをしきりに気にしていた。しかたないので、僕は翠に串焼きを買ってあげると、喜んで食べるのだが、一瞬で食べつくしてしまい悲しそうな顔をする。

「美味しいけど、ぜんぜん足りないのだ……」
「宿に戻れば夕食があるから、我慢しないとダメだよ」
 そう言って諌めるがあまりに寂しそうな顔をするので、ついもう一本買ってあげてしまう。何かペットに餌付けしているようだ。

 女性陣は小物の露店を吟味しながら回っていたが、特にめぼしいものも見つからなかったようなので、宿に帰って夕食にする事にした。

 夕食は僕ら向けに大衆向けの味付けで量が多めだった。翠が凄い勢いで、食の細いキーナさんの分まで食べていて、あの小さな身体のどこに、そんなに入るのだろうかといつも不思議に思う。

「明日の午後あたりに3つの州へ分岐する岐路があって、そこから先の治安が悪くなるから一応みんな気をつけてね。だから今晩はしっかり休んでおいた方がいいわよ」
 食事の終わり際にエストリアさんの忠告を受けて、僕らは早めに休むのだった。


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