チート(現代知識)×チート(魔法)×チート(武術)はチート∞(天災級)?!

もるもる(๑˙ϖ˙๑ )

第65話(翠の新必ず殺しちゃう技)

 地下の訓練施設に移動した僕達は、まずは武術と魔術のおさらいをする為に、各々物理戦闘施設と魔法戦闘施設に分かれて、軽く身体を動かしていた。

「アル!アル!必殺技がしょーりゅーげきに続く新しい必殺技を考えたのでやってみたいのだ!」
 翠がそういうので、魔導人形を案山子モードに設定してあげる。

 翠は左足を前に出し、少し腰を落とした中腰の姿勢で両方の拳を腰溜めにして握りこみ、身体を巡る純粋な魔力を両方の拳に宿らせる。
 十分な魔力を練り込み左拳を開きながら勢い良く前に突き出すと、眼前に身体を包み込めるような大きさの疾風の渦が形成される。
 そして右の拳全体を翠色の光で包んで疾風の渦に向かって身体を捻り込みつつ左足で地面を大きく蹴り出す!!

ドガァァァァァンッッッッ!!!

 次の瞬間5mくらい離れて立っていた魔導人形が、10m離れた壁に大激突して粉々に粉砕される。インパクトの瞬間は全く見えなくて、僕らが認識できたのは胴体に拳大の穴が開いた魔導人形が壁に激突して粉々になる所だった。

ゴゥゥゥッッ!!

 魔導人形が叩きつけられたのを視認した瞬間、突風が衝撃を伴って襲ってきて僕らは吹っ飛ばされる。

【あー、こいつは音速を超えた時に発生する衝撃波ソニックブームだな。しかし、あの竜の嬢ちゃんこれまたエゲツない技を考えた出したもんだ。あの疾風の渦は射出機カタパルトみたいなもんで、そもそも嬢ちゃんの亜音速に達する踏み込みを更に加速させて音速を超えさせてるから、普通の人間にはまず避けられん。踏み込みの音が聞こえた瞬間に殴られているからな。しかもアダマンタイトすら撃ち貫きそうな風の拳で殴ってる。避けられない上、当たれば確実に死ぬ。まさに必殺技だ】
 筋肉さんが技の解説をしてくれるのを聞くと、確かに必ず殺すと書く必殺技に相応しい技だ。

「アル見てくれてたか!これが新必殺技の<しっぷーらんりゅーけん>なのだ!疾風と共に嵐を呼ぶこぶしなのだ!!」
 翠が勝ち誇った顔で胸をいっぱいに反らせながらアピールする。

「う、うん。凄いよ。さすが翠だね。でも人に使うのは止めようね。きっと死んじゃう」
 言うなれば疾風ブラスト嵐流拳テンペストナックルなんだろうなぁ……でも威力と効果範囲が酷すぎて敵も味方も皆殺しになりそうな技だ。

「そうなのか?」
「本当の必殺技はいざという時の切り札として取っておいた方が凄く格好良いと思うから、普段使いは嵐流拳テンペストナックルにしておいて、いざという時の切り札で疾風ブラスト嵐流拳テンペストナックルを使うのはどう?」
「そうするのだ!さすがアルなのだ!!格好いいのだ!!」
 僕の回答に少し翠が寂しそうにしたので、僕が秘密にしておいた方が格好良いと勧めると、パァッっと満面の笑みを浮かべて大はしゃぎする。

「まずは、あの風の渦を作らないで、間合いを詰めて風の拳で殴る技だけやってみて」
 僕はパネルを操作し、案山子の魔導人形を選択する。

 翠はさっきと同じように、翠は左足を前に出して少し腰を落とした中腰の姿勢をとる。そのまま右手だけ魔力を集中し、裂帛の気合と共に左足で地面を蹴る!

ドゴォォォォンッッ!!

 今度は身体が霞む様な速さで魔導人形に突進して魔導人形の腹部に拳をめり込むせる。先ほどと違って魔導人形は斜め上に飛んでいき、壁に激突すると形状を残したまま地面に叩きつけられる。

「うん。今ので昇竜撃+αくらいの威力かな。防御魔法を使っていないと、ほぼ死んじゃうのは昇竜撃と一緒だから仕方ないか」
「仕方ないで済ませる問題じゃないだろっ!」
 今まで唖然として呆けていたオスローが突っ込んでくるが、ここは知らない振りで対応する。翠を悲しませたくないから仕方ないね!

 その後何度か試してみて利き腕ではない左手でやってみると、ランク3の戦士が重傷になるくらいの控えめなレベルに落ち着いたので、基本的には左手で必殺技を打つ事で合意した。そういえばシリウス先輩に昇竜撃を入れた時も左手だったっけ……と今更ながら大事故にならなくてよかったと胸をなでおろしたのは秘密だ。

「普通の必殺技は左手で、強敵には右手を解禁するのだ。さらにさらに強い敵には、しっぷーらんりゅーげきの3段構え……凄く格好いいのだ!!」
 まぁ翠は大喜びだし、これで一般人を殴り殺す事は少なくなりそうだからいいか。

 翠に付き合っていたので、僕とオスローは新たな技の開発は途中になってしまったが、模擬戦の時間になったので、部屋を出ると別の物理戦闘施設で訓練してたウォルトさん、イーリスさんと合流し5人で集団戦闘施設に移動する。

「翠はんの気は晴れたん?」
 イーリスさんが翠に聞くと、嬉しそうに新必殺技を作ったのだ!と応えていたのを見て、僕は微笑ましく見つめてしまうのだった。

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