チート(現代知識)×チート(魔法)×チート(武術)はチート∞(天災級)?!

もるもる(๑˙ϖ˙๑ )

第61話(決勝戦 決着)

「私……もう気持ちが押さえきれないわ。だから……<リミット オフ>!!」
 エストリアさんの安堵と怒りと開放が入り混じった声が煙の中から響く。

「なっ!飛竜ワイバーンすら焼き尽くす完全な爆炎球エクスプロージョンの魔法だぞ。直撃を受けて平気なはずがない!!」
 肩で息をしながらツァーリが喚き散らす。

「避けも反撃もしなければ良いんですよね?なので防御させてもらいました」
 僕は煙の中から足を踏み出し、ツァーリに答える。

 ブスブスと床は溶け、爆炎で土壁も吹き飛んで平地のようになっている僕達のフィールドに、全員が無傷で立っていた。

「ななななななんと!!1年生Aチーム!無傷!無傷です!!私は夢を見ているのでしょうか?!あの万全な爆炎球エクスプロージョンの魔法を受けて5人とも無傷です!!ありえません!!試合場の床が融解し、土壁がほとんど吹き飛んでいるという事は、確実に着弾した事は疑うべくもありません!!しかししかし、無傷で立つ1年生Aチーム!!どんな魔法を使ったのかっ!!!」

「ありえない……ありえない……」
 ツァーリはブツブツ言いながら後ずさる。

「こんなはずはないんだぁっ!!千の炎サウザントファイアァァァァッッッ!!」

ズバババババッッッッ!!

 何十本の炎の礫が、僕を襲い着弾するが僕は全くの無傷だ。

 スレイ先輩との戦いで使った魔法<アンチマジックシェル>により、全ての魔法を無効化しているのだ。

「もういいわ……沈んで?」
 ため息を吐きながらエストリアさんの体が軽く沈むと、大きく飛び上がる。空中で体を横に一回捻ると、いくつもの岩石が生まれる。そして大きく後ろに引いた小剣をツァーリに向けて突き出す。

星屑のスターダスト流星メテオ!!」
 突き出した小剣に合わせて、無数の岩石がツァーリに降り注ぐ!!そしてエストリアさんは空を地面のように強く蹴りつけると強烈に発光しながら流星のごとく空を翔る!!

 降り注いだ岩石で滅多打ちにされ、魔法防御を撃ち抜かれ腕章が千切れ飛んだ所に、エストリアさんの流星のごとき突進が襲い掛かる!
 小剣はツァーリの肩口に突き刺さり、そのまま貫通し地面にツァーリを縫い付ける!!

「決まったーっ!!エストリア選手の大技がツァーリ選手にヒットしたぁっ!!」

「ぐあぁぁぁぁぁっっ!!痛い!痛い!!死んでしまう!!おいっ!誰か!私を助けろ!!」
 深く突き貫かれた肩口からドクドクと血を流しながらツァーリはチームメンバーに命令する。だが味方をも巻き込んだ爆炎球エクスプロージョンの魔法でツァーリのチームは壊滅しており、誰も反応しない。

「自業自得ってやつだ。お前の手下は誰も残っちゃいないぜ?」
 オスローが冷たく突き放す。

「このままでは、死んでしまう!!お前達、この偉大なる貴族である私を助けさせてやるから、感謝しながら助けろ!!」
 僕達を見ながら命令するが、当然聞くわけがない。

「あんたバカ?それが助けてもらう人の頼み方だと思ってるの?それに私達があなたを助ける義理があるとでも思ってるの?そのまま苦しみながら死ぬといいわ」
 エストリアさんは冷たく言い放つ。

「痛い!痛い!いたい!イタイ!!イタ……イ!!」
 錯乱し大騒ぎしていたツァーリはやがてあまりの痛みに口から泡を吹きながら意識を手放した。

「まだやるか?」
「依頼はほぼ果たした。雇い主がアレでは……我々も撤退するしかなかろう。だが!!紅の猟団を敵に回した事をただで済むとは思わないことだ。その内、後悔する事になるだろうな」
 一方、観客席で睨み合っていた傭兵にウォルトが問いかけると、傭兵が苦し紛れにそんな事を言う。

「こちらとしては対立したくてしたわけじゃないんだけどね。仲間の家族を助けただけだよ。それに・・・に手を出して、ただで済むとは思わない事だ」
 カイゼルが急激に冷えた凄みのある凄惨な目で傭兵を突き刺す。

「何もんだ?てめぇ?」
 カイゼルの圧を含んだ言葉を受けた傭兵はビクッと身体を震わせるながら睨みつける。

「なに、ただのしがない学生さ」
「ふんっ」
 カイゼルがおどけながら答えると、傭兵は鼻を鳴らし片腕になった魔術師を連れて踵を返し去っていく。

 エストリアさんはツァーリの肩口に突き刺さった小剣を引き抜くと、血が更に溢れ、ツァーリの体がビクンビクンと跳ねる。
「殺してやりたい所だけど、目覚めが悪くなるから……光よ、彼の者の傷を癒し給え。快癒ヒール!」
 暖かい光が、ツァーリの肩口に灯り、傷が小さくなっていく。

 僕達はエストリアさんの周りに集まると、一度拳を突き合わせて、空高く突き上げる。

「「僕」「オレ」「私」「わたし」「翠」達の勝ち「だ」「です」っ!!!」

「今年の選抜戦を制したのは、何と前代未聞の一年生Aチーム!見事、選抜戦の歴史に金字塔を打ち立てたっ!!」
 実況が高らかに勝利宣言すると、会場は割れんばかりの歓声と拍手の渦に包まれる。

 エストリアさんの家族も笑顔を浮かべて拍手している。エストリアさんは、家族に手を降りながら一筋の滴が頬を伝う。

「本当に良かった……みんなありがとう」
 そんな呟きが風に乗って僕の耳に届くのだった。

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