チート(現代知識)×チート(魔法)×チート(武術)はチート∞(天災級)?!

もるもる(๑˙ϖ˙๑ )

第60話(決勝戦 中盤 観客席)

キィィィィィィィンッッッ!!!

 強烈な閃光と耳を劈くような高音が試合場を覆うと傭兵達は慌しく動き始める。

「<リミット オフ>」
 カイゼル達は目配せし合うと、キーワードを発して身を潜めていた場所から一気に駆け上がる。

「クラクラ回れ!眩暈ディジィ!!」
 イーリスの魔法が発動し、見張りをしていた2名はフラフラしながら頭を押さえて膝を付く。そこへ、駆け寄ったカイゼルとウォルトの手刀が首筋を強く殴打すると、見張り2名は崩れ落ちる。

 上を見上げると魔術師がエストリアの父親、熟練の傭兵がヘンリー君をつれており、試合場の入り口に立っているのは熟練の傭兵で、魔術師はそのすぐ後ろにいる。

 2人ともこちらの行動にはまだ気が付いていないようで、観客席の方に目を向けている。カイゼル、ウォルト、イーリスは息を潜めて隙をうかがう。

「動きがあったら、魔術師は私、傭兵はウォルトが突っ込んで救出し、そのまま観客席の方に駆け抜ける。イーリス嬢は一緒に駆け抜けて、魔術師の魔法を防ぐサポートをして欲しい。そして、うまく駆け抜けられたら、父親とヘンリー君を連れて安全な場所まで逃げてくれ。傭兵と魔術師は私達が何とかする」
 カイゼルが念話で3人に伝えると、それぞれが了承と頷く。

ドゴァァァッッッン!!!

 轟音と熱波が会場を揺らす。

「今だ!!」
 3人が解き放たれた矢のように駆け出す。

 一瞬で魔術師の間合いに入ったカイゼルの細剣が閃いて、エストリアの父親を押さえつけていた魔術師の腕を斬り飛ばすと、そのまま父親を脇に抱えて観客席に飛び出す。

 続いてウォルトが傭兵の背後まで間合いをつめると、ヘンリー君の首下に突きつけている短剣を握っていた親指の付け根を狙って傭兵の首の後ろから拳を飛ばす。
 予想外の方向からの突然の加撃にあっけなく短剣は弾き飛ばされて観客席に転がる。

 そのままウォルトはヘンリー君を押さえつけていた傭兵の肘に向かって下から拳を叩き付ける。痺れるポイントを一発で打ち抜いたウォルトは痺れて握力のなくなった傭兵からヘンリー君を奪い取り観客席に走り抜ける。

「な?!」
 一瞬の出来事に目を見開く傭兵。

「イーリス、ヘンリー君を頼む!」
 ウォルトがヘンリー君をイーリスに預けると背中に担いでいた両手剣を抜き構える。

「お前ら、オレが紅の猟団の一員と知っての狼藉か?」
「お前らが紅の猟団だか何だか知らないが、オレの友人の家族を人質に取っていたのが許せんだけだ」
 傭兵とウォルトの間で緊迫した空気が流れる。

「救出は成った!後は心置きなくやってやれ!!」
 カイゼルはまだ立ち込め続ける爆炎にむかって大声で叫ぶ。

 爆炎球エクスプロージョンの魔法は試合場を溶かし、安全対策の護符すら一瞬で破壊し焼き尽くす威力だ。直撃を受けた以上、5体満足のわけがない。

「失敗したか・・・まぁいい。今頃、あの無礼な平民どもは黒焦げだ。お前のした救出とやらは何の意味もなかったということだ。バカめ」
 カイゼルの言葉に反応したツァーリがちらりと傭兵の方を向きチッと舌打ちをするとカイゼルを罵る。

「バカは貴方の方だ。うちの仲間はかなりからな」
 ツァーリを上から見下ろしているカイゼルは楽しそうに笑みを浮かべながらそう言い放つ。

 もうもうと上がり続ける煙が少しずつ薄れていく中、人影が見える。

「ありがたい……もう本当にありがたいわ。家族を救ってくれたカイゼル達も、このアルもね」
 煙の中からエストリアの声が響く。

「私……もう気持ちが押さえきれないわ。だから……<リミット オフ>!!」


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