チート(現代知識)×チート(魔法)×チート(武術)はチート∞(天災級)?!

もるもる(๑˙ϖ˙๑ )

第45話(特訓につぐ特訓)

 次の日の放課後、春の選抜戦に出場予定の4人は地下訓練施設のロビーに集まっていた。まず役割の再認識という事で、今の自分に出来る事と、これからやっていくべきことを発表し合う。

「これからのこの4人+フォロー1人で戦うわけだから、へんな気遣いとか他人行儀な事は止めたいと思う。という名目はあるが単に連携時に呼びにくいので、名前は呼び捨てにしよう。これからオレはアル、翠、リア、キーナって呼び捨てにするからよろしく」
 オスローが焦茶色の瞳に元気な光を宿しながら、そう切り出す。確かにまず第一に必要なのは信頼関係の構築だよね。

「じゃぁ私も、オスローも呼び捨てにさせてもらうわ。それに……アル……もね」
 ちらりと濃紺の瞳でこちらを見ながらエストリアさんが言う。

「翠も!翠も!呼び捨てにするのだー!ってあれ?翠は最初からなのだ?」
 翠が、綺麗な翠色をした短めのツインテールをポンポン跳ねさせながら、不思議な顔をすると、みんなが笑みに包まれる。

「わ、私も、慣れてないけど……頑張る、よ。わ、私には呼び方は呼びやすい形でいい……です」
 キーナさんは髪の奥に覗く目でみんなをしっかり見ながら頑張って発言する。

「えっと……僕も。オスローと翠はいいとして、キーナとリアでいいかな?」
 リアと愛称で呼んだ時に、キッと睨まれたけど何も言ってこないから大丈夫なようだ。

「じゃぁ、役割だな。オレの武器は斧槍ハルバード。威力とリーチと汎用性はあるけど、取り回しが苦手だ。開けたところならいいが狭いところだと不利になる。近接戦闘のやや間合いを離している位置がベストポジションだと思っている。前衛が翠とオレだから、今後の指針は取り回しの改善と、防御的な動きで敵を抜かせない立ち回りを覚える事だな」
 カイゼルさんがいると、そっちに発言を任せているけど、カイゼルさんがいない状況になると、オスローがリードすることに驚きながら意見を聞く。

「翠は、だーっと行って、ドガーンとするのだ!!」
 うん。翠はとってもシンプルだね。だから誰かが手綱を握らないとダメだね、これは。

「わ、私は、後方で状況分析と戦術指揮。それと戦術級魔法攻撃と支援……かな。指揮には自身がないけど……」
 キーナの加護は紡ぎ手スピナーだから状況分析や戦術指揮には特性があるし、魔法の覚えも良いのでぴったりだと思う。だけど、本人も言っている通り、喋るのが苦手なのに指揮が取れるかどうかが課題だと思う。

「アルはあれだな。単独で状況をひっくり返せる物理戦闘力と魔法戦闘力があるし、支援魔法や戦術級魔法もある。だから中衛にいて、前衛と後衛で足りない方に力を入れつつ、いざという時は遊撃として、相手の一番のストロングポイントを潰す役割だなぁ。ただなぁ、アルはやらかすからなぁ……」
「うん、そうね。アルは必ず何かやらかすわよね……」
 オスローが僕の役割を発言するが、なかなか難しそうな顔もする。そしてそれに激しく同意するリア。何か二人共、息がぴったりなんだけど。

「まぁ、中々に難しいポシションになると思うから、私も仕方なく特訓に付き合ってあげる。カイゼルに言われたからね」
 仕方なくを異様に強調しながらリアが僕の特訓に付き合うことを同意する。

「わ、私が、状況を分析して、アル、君にお願いする感じで?」
「そうね。後衛は一番視野が広いから、それをお願いできると頼もしいわ」
 キーナが心配そうに聞くのでリアがそれに答える。

「じゃぁ方針はこうね。オスローは近接物理攻撃の更なる向上と、敵を抜かせない防御的役割の特訓。翠ちゃんは、攻撃方法が超近接攻撃の拳なので、長柄武器ポールウェポンなどリーチの長い武器への対策。キーナは淀みなく喋る特訓と、戦術級攻撃魔法、戦術眼を磨く特訓。私とアルは中衛としての動きの特訓。支援魔法や戦術級攻撃魔法の訓練をする時はキーナも参加する感じで。あと、最後に全員で戦闘指揮の通り動く特訓かな」
 リアがそれぞれの指針を最後に全部まとめてくれる。こういう所、本当に助かるよなぁ。

『それならば、模擬対戦が出来るような施設が必要ですね、一番奥の部屋が使えそうです。後は幾つかの魔法を構築しておくとしましょう』
『坊主、体の大きいやつと本格的にやり合うことになりそうだから、もうちっと剣術と体術を磨いておいたほうが良さそうだぞ。ま、おいそれと人前だと鬼闘法も使えないだろうしな』
『ふむ。魔法の発動を早めるために戦闘状態での魔力管理も必要かもしれんの。常に魔法を即発動できるように魔力を巡らせておく手法も覚えておくのじゃ』
 僕の中の3人も特訓に付き合ってくれるようだ。でも、この3人が力を貸せば貸すほど、やらかしが増えている気がしないでもないんだよなぁ。

 そんな事を思いながらも、3人から色々な手ほどきを受けて、間違いなく僕は強くなっていっている。手ほどきを受けた後に、地下訓練施設の物理戦闘施設と魔法戦闘施設でBランク相手に戦ってみた所、辛うじて勝つことができたので、その効果は推して知るべしだ。

 3人から教えてもらった武術や魔術を、僕のわかる範囲でみんなにフィードバックする。全ては無理だけど、少しでもその技術を習得しようと頑張った結果、みんなが相当にレベルアップしていった。

 そうして、より実践に近い訓練をしようと集団での模擬対戦も多くしていく。

「じゃぁ、まず4vs4の純粋な戦闘訓練を始めるわ。地形は闘技場。相手は軽戦士の小剣タイプ、軽戦士の弓タイプ、重戦士の長剣+盾タイプ、重戦士の槍タイプのCランクで試してみましょう」
 リアがそう言い、操作盤コンソールを操作すると、ごつごつした石の隆起があった地形が整地され、直径40mほどの円形の闘技場になる。

 そして、地下からせり上がるように魔導人形が現れ、前衛に小剣、長剣+盾、中衛に槍、後衛に弓といったフォーメーションで戦闘の構えを取る。

 僕らも闘技場に立つと、カウントダウンが始まる。0のカウントと同時に魔導人形達が一斉に動き始めて僕達の方に向かってくる。

 まずは長剣+盾の魔導人形が先陣を切って突撃してきて、小剣使いは側面から回り込むようにオスローに向かって行き、弓は正確に翠を狙って矢を射掛けてくる。

 矢をステップして避けたとしても、連続して矢を放ってくる為、翠が自由に動けなくなっている。その間にオスローが正面の長剣+盾と側面の小剣の2対1の状況を作られてしまう。

「ア、アルは奥の弓を排除して下さい!」
 キーナの指示を受けると、僕はオスローと翠の間を通り抜けて、槍の魔導人形の前に飛び出す。槍の魔導人形は、僕が間合いに入ると攻撃範囲の広い槍の水平薙ぎを放って来る。その攻撃に僕は小手を使って、槍を上方に受け流すと、槍の懐に入りがけに小剣を腹に走らせる。

 その小剣が届く前に槍の魔導人形の中段回し蹴りが僕の側面から放たれてきたので、とっさに飛び退いて回し蹴りを回避する。
 そして飛びのいた反動を利用したダッシュで、槍を無視して弓の魔導人形に突進する。だが、槍の魔導人形は冷静に無防備に近い僕へ向けて2段突きを放ってくる。

 一段目は僕の胴体。2段目は僕が駆け抜けるであろう空間に置かれるように放たれる。僕は胴体へ槍を突進の勢いで躱しながらも、置いておくように放たれた二段目の槍に自ら当たりに行く形で突っ込んでしまい、槍の痛撃を食らってしまう。

「ぐあぁっ!」
 僕が槍の魔導人形に痛撃を加えられたとほぼ同時に、オスローが悲鳴を上げる。オスローは魔導人形の盾で斧槍を跳ね上げられ、無防備になった胴に小剣と長剣が命中していた。その一撃は致命傷だったらしく、オスローは戦線を離脱してしまう。

 そして長剣+盾のゴーレムはそのまま翠に近付き、翠の動きを封じ込めると、小剣の魔導人形がキーナの間合いに入り剣を一閃。後衛職のキーナが避けれる訳もなく戦線離脱してしまう。

 そして僕は標的を変えた弓と槍に囲まれながらも、何撃か凌いでいたが、足元に矢の攻撃を受けてしまい、動きが止まった所に槍の二段突きを食らって戦線離脱してしまう。
 残った翠は善戦してたが、弓と長剣と小剣のラッシュに押し切られて負けてしまった。

「あー、負けちまったなぁ。もう少し何とかなると思ったんだけどなー」
 オスローが頭の後ろで腕を組みながら感想を言う。

「こ、これは、私の戦闘指揮のミス……です。2対1の不利な状況をこちら側に作ってしまいました。わ、私の魔法で、オスロー君に向かったどちらか一体を足止めできれば、勝機があった……かもしれません」
「翠もあんなに矢を撃たれたらうまく動けないのだ」
「そうね。翠ちゃんは標的にされていたし、機敏さを考慮したらアルじゃなくて翠ちゃんに弓を処理してもらうべきだったわね」
 みんなで上手くいかなかった所など課題を挙げて、その対処法を考えていく。ある程度考えがまとまって課題の解決が見えたら、また実践という形で繰り返していく

 2回戦目は1回戦目の反省を生かして、同じように攻めてきた魔導人形に対し、翠が素早く矢を潜り抜け、弓の魔導人形を倒す。そして数的優位に勝るこちらが、じわじわと他の3体を削っていき勝利を得る事が出来た。
 そのまま更に改善を加えて3回戦目をしてみたが、盾の魔導人形にオスローと僕が食い止められているうちに、翠が取り囲まれて落とされてしまい、そのまま負けてしまった。

 どうやら魔導人形もこちらの動きを学習して対処してくるらしい。

 僕達はそんな魔導人形に勝つべく、外野で見ていたリアにもアドバイスを貰いながら敗北と勝利を繰り返し、戦い方を洗練していくのだった。

 そうして、Cランクの集団物理戦闘で安定して勝利を収められるようになってきてからは、リアと交替したりしながら、敵も魔法ありでの集団戦闘で経験を積んでいく。

 毎日毎日、やられては課題を洗い出し相談して解決法を模索していくのを繰り返している内に、僕らの戦闘は洗練されていき、絆も深まって、メンバーの考えや行動が把握でき、アイコンタクトで戦術を変更できるようになってくるのだった。


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