チート(現代知識)×チート(魔法)×チート(武術)はチート∞(天災級)?!

もるもる(๑˙ϖ˙๑ )

第09話(祝杯、そして出発)

 僕が宿屋に戻ると女の子が封筒を目聡く見つけて、お祝いを言ってくれると厨房のおじさんに声をかける。
 すると厨房からお祝いの言葉と共に夕食を奮発するからすぐに支度して降りて来いと声がかかる。

 明日の朝1の馬車で故郷の村に帰る予定なので荷物をまとめる。とはいえ衣服が2着と夜着が1着、そして愛用の木剣とお土産の調味料くらいしか荷物がないので、あっという間に片付けは終わって、夕食を取りに食堂へ向かう。

 食堂には大量の食べ物とお酒が用意されていて、父さんくらいの年齢の冒険者がたくさん席に座っていた。
 みな、木のジョッキになみなみとお酒をついで準備している。

「無事レイオットんとこの坊主が、アインツ総合学園に合格したことを祝して乾杯!!」
「乾杯!!」
「乾杯!!!」
 宿屋のおじさんが、カウンターでジョッキを高く持ち上げ大声で叫ぶと、皆が更に大きな声で返したので、僕はびっくりして目を見開いていてしまう。そして宿屋のおじさんが豪快に笑いながら近づいてくる。

「受かったら祝勝会、落ちてたら残念会ということで、レイオットの知り合いを呼んでおいたのさ。でも祝勝会になって本当によかった。おい。おめぇら!今日は俺のおごりだ!!存分に飲み食いしてレイオットの倅をもてなしてくれ!!」
「マジか!よし今日は飲むぜーっ!」
「親父太っ腹っ!!」
 そこらじゅうで歓声が上がり、みな食事と酒に手を伸ばし、楽しそうに飲み食いする。

「まさか、レイオットのとこの坊主が特待生とはなぁ。あいつはいつも補習ばっかしてたのに」
「レイオットの朴念仁もこんないい子を作って育てたのねぇ」
「女湯を覗こうとして壁をぶち抜いたレイオットがなぁ」
 皆が口々に父さんの昔話を語ってくれるので、僕はとても嬉しくなって、目を輝かせながら皆の話に聞き入っていた。

 楽しい時間はあっという間に過ぎて、明日があるからとキチンと帰る人、まだまだ飲んでいる人、机に突っ伏して寝てる人など、キチンと起きている人がまばらになってくると、僕も疲れて瞼が重くなってきた。
 宿屋のおじさんに重ね重ねお礼を伝えると、部屋に戻りベッドに倒れこみ、こんなに素晴らしい一日は初めてかもしれない……と瞼を閉じた。

 次の日も時間通りに起床し、いつもの朝練を行う。父さんと同じ冒険者を目指せると思うと素振りにも気合が入る。

 いつも通りの型をこなしていると、物陰から視線を感じる。殺気がないので危険はなさそうだと、素振りを続けていると、おずおずと出てくる気配がする。
 一旦素振りをやめて振り向くと、宿屋の女の子が恥ずかしそうに、もじもじしながらこっちにやってくる。

「ご、ごうかく。おめでとうございました。これ、おいわいです」
 なんか言葉がおかしい気がしないでもないが、女の子の手には木彫りの蛙の根付が握られていた。冒険者の店には冒険から無事に帰ってこれるようにと蛙の根付が販売されていて、長期の旅や危険な旅に出るときに、願掛けのお守りとして購入することがある。

 僕は感謝を伝えると、蛙の根付を受け取り、自分の木剣の柄につける。女の子はそれを見ると嬉しそうに微笑み、顔を赤らめながら走って戻ってしまった。

 僕はそれを見送ると、荷物を引き上げて宿代を精算し、冒険者の宿を出る。おじさんとおばさん、女の子に見送られて宿屋を出た僕は乗合馬車の発着場へ向かう。

 予約票を見せて乗合馬車に乗り込むと、親子連れの家族と、冒険者風の2人組と一緒だった。

 親子連れの方の席は埋まっていたので、僕は冒険者風の2人組の横に座り、これに乗ってあと2日で家に帰れる。そしたら、父さんと母さんに報告して、大変だけど総合学科で色々な事を学ぶ挑戦をしたいと伝えないと。

 そんな事を考えているうちに馬車が出発する。

 3日前に竜の巣を吹き飛ばした事をすっかり忘れていた僕は、この後に起こるトラブルをこの時は想像すらできていなかったのだった。

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品