学芸院凰雅の華麗なる日常

枕返し

学芸院凰雅と最強の敵

放課後、凰雅は能丸と一緒に下校しようとしていた。

「さっき太鼓持先輩からお茶しないかって誘われたんだけど、凰雅どうする?」
「太鼓持?あの不良の先輩か。なんだ能丸、あんな奴の誘いに乗るつもりなのか?」
「乗ると言うか、断る理由もないと思うんだけど。あの人たぶん凰雅と仲良くなりたいんだと思うんだよね。だから凰雅が気が乗らないなら断ろうと思うけど。」
「そうか。能丸はどう思う?あの先輩と付き合った方がいいと思うか?俺は不良という奴等がどうにも好かんのだがな。」
「うーん、そうだね。でも、それを判断するために会って話してみてもいいんじゃないかな。」
「能丸がそう言うならそうしてみるか。それで、誘われたのはいつなんだ?」
「とりあえず今日誘われてるよ。」
「今日か。すまんが今日は妹にトイレットペーパーの特売を頼まれているから無理なんだ。」
「わかった。じゃあ後日って伝えておくね。」


二人がそんな他愛もない会話をしながら校門にさしかかった時、能丸はある違和感を覚えた。
「何かあったのかな?何か変じゃない?」
能丸が指さした先、校門には人だかりができていた。
どうやら何かを避けるような動きをしている。そう思った凰雅は目凝らしソレを見る。そして、そこにいた者を見て凰雅は無意識に身震いをした。
「な、なんだあいつは・・・。」

校門にいたのは身長2メートル程度の男。
しかしそんなことより目を引くのは服がはちきれんばかりに隆起した筋肉だった。
「あの人、凄い大きい体だね。凰雅と同じくらい?あの制服は他校の人みたいだけど。御用崎君がいればどこの学校の人かわかったかもね。」
「あ、あいつ・・・。ただものじゃないぞ。」
「そうだろうね。一目見れば僕でもわかるよ。」

学芸院凰雅は戦慄した。
その理想的とも言える筋肉に。
そんな理想の男を体現したかのような男は校門の前で生徒に片っ端から声をかけていた。
「すまぬが我はある男を探しておる。貴様、学芸院凰雅ではないか?・・・むぅ、違うのか。」
「もし、貴様が学芸院凰雅ではないか?・・・むぅ、違うのか。」
「貴様!貴様はなぜ逃げる!もしや貴様が学芸院凰雅なのではあるまいな!逃げるのなら女とて容赦はせんぞ!」


「・・・危ない人みたいだね。どうする?裏門から帰る?」
「いや、あいつは俺を探しているのだろう。やましいことは何もしていないのだから堂々としていればいいさ。」
「そう?でも何か怪しい人だし気を付けてね?」


「むぅ、そう言えば学芸院凰雅は男だと言う話であった。あの女が学芸院凰雅のわけがなかったな。失念しておったわ。・・・もし、貴様もしや」
「そうだ。俺が学芸院凰雅だ。俺に何か用か?」
「ほう!ようやく会えたわ。全く手間をかけさせおって。」
「知らんな。お前が勝手に手間をかけただけだろう。それで?お前は何者だ。俺に何の用だ。」
まさに一触即発の二人。
その強者のオーラを察知してか他の生徒は近づこうとせず、ひそひそと話しながら遠巻きに見ているにとどまっていた。


「我が名は魔造寺狂獄丸。最近巷を騒がせている貴様の強さを確かめに来た。」
「ほう。だが俺はしがない一般高校生だ。噂になるような者じゃない。人違いだろう。」
「人違いかどうか・・・。試させてもらおうっ!」
ガッ!

「・・・ほぅ。」
狂獄丸は腕を全く振りかぶることなく、一瞬で凰雅の顔面にパンチを放った。
だが凰雅はそれを事も無げに受けたのだ。
「やれやれ。いきなり何をするんだ。話の途中でいきなり殴りかかってくるなんて、少しビックリしてしまったぞ。」
「わっはっはっはっはっ!何が人違いなものか。我の拳を受けることができる者がこの世にそう何人もいてたまるか。我の攻撃を受けたことこそ、貴様が噂に名高い学芸院凰雅その人という動かぬ証拠よ。」
「知らんな。だが俺は暴力を振るう奴は嫌いなんだ。お前がその気なら俺は正当防衛をさせてもらうぞ。」
「望むところだっ!ふんっ!はぁぁぁぁ!」
ビリッ バリバリバリ  バァァァン
魔造寺狂獄丸がひと際大きな咆哮を上げると、身にまとっていた衣服は内側から湧き出でる圧倒的な力に耐えきれず、破け、四散した。
そうして露わになった狂獄丸の肉体は筋骨隆々。
その肉は分厚く、さながら鋼よりも強固な鎧を纏った戦士であった。
美しいまでに鍛え上げられた肉体は肌を埋め尽くす数多の生々しい傷が彫られていて、この男がどのような男なのか、どのような人生を送ってきたのかということを言葉を尽くさずともありありと表していた。
「ゆくぞっ!学芸院凰雅っ!」
「・・・やれやれだ。」


二人の猛者の戦いは凄まじく、その余波だけで校舎は震度3くらいの揺れに見舞われた。
だがそんな戦いも次第に優劣がつき始める。
少し離れたところで混乱する一般生徒の誘導に当たっていた能丸はその光景に驚愕を隠せなかった。
「あれ?もしかして、凰雅が押されてる?珍しいな。」
今まで彼は学芸院凰雅という男の規格外れの強さを身近に見ていた。だからこそ眼前の現実が信じられなかったのだ。
学芸院凰雅が膝をつく姿を。

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