修学旅行

ちゃび

第6話 拒絶

肩をぽんぽんと叩かれ、はっと我に帰った。
目の前にミアさんの顔があった。
私たちはぐっすりと眠ってしまっていたようだ。
「起きて。ここが私たちの家よ。早く起きないとジャックが2人とも抱えていくぞって言ってるわ。」
「あはははは。その方が楽だよ〜!ね、まりん〜!」
「うふふ。そうね。」
と言ってもキャリケースなどもあるので、ジャックさんを頼るわけにもいかず、車から荷物を降ろし家に向かった。

とても広い敷地だ。暗くてよくわからないが、植物がとても茂っているかのように青々としている。
学校と校庭くらいの広さはあるんじゃないだろうか。5分ほど歩くと目の前に、周りの自然と調和する大きな家屋が出てきた。
あとから聞いた話だが、2人も自然が好きで、外からも中からも木造に見えるように専任の設計士を雇い、作った家屋とのことだ。

ジャックさんが家の中を案内してくれた。
最後に2階の奥の部屋を案内され、扉を開ける。緑のパステル色の壁紙が目の前に広がる。
「息子たちが昔使っていたんだ。ここを使うといい。」
ベッドが2つに、風通しがいいように大きい窓がついている。
「私は先に下に行くよ。ディナーの準備をするからね。まず着替えたりしなさいな。」
2人はこくりと頷いた。
荷解きをし、部屋着の短パンとシャツに着替える。
今の私にぴったりのサイズだ。
白いシャツは細く見えるように設計されており、シャツの上からでもウエストの曲線美が伝わってくる。
グレーの短パンからはすらっとした太ももが見える。女性らしさは感じるものの無駄な贅肉はなく、太ももの太さと短パンの裾がちょっどマッチしている。

「まりん、やっぱほっそーい!」
「えへへ、この服スタイルよく見えるの♪」

そうやって話していると下の階からミアさんが頑張って声を張り上げているのが聞こえる。
「2人さーん!!お待ちかねのご飯よー!!!」

子供部屋を出て、階段を降り、ダイニングルームの扉が近くなってくるといい匂いがしてきた。
でもなんだろう。この匂い。独特な匂いが鼻をついた。
はじめての海外で、はじめての本格的な海外料理だからか?と思った。
そう考えるのも束の間、さやかが扉を開けるとその理由がすぐわかった。いや正確にはわかってはいるものの、理解は追いついていなかった。

日本の一般的なものより、2倍くらい大きいのではないかと思われるダイニングテーブルに所狭しと料理が並べられている。

フィッシュアンドチップス
ミートパイ
カンガルーミート
ラムチョップ
マッシュポテト
オーシャントラウト
サラダ

すごい料理の数と量。こんなに多くの料理がそれぞれ競い合うように美味しそうな匂いを醸し出しているので、独特の匂いに感じてしまったのだ。

4人は食事の席につく。
「すごい量ですね…!」
思わず心の声が漏れた。
横にいるさやかに目で合図を送る。しかし、さやかの目はその前に並べられている色とりどりの食材に釘付けになっていてそれどころではなかった。もう、食いしん坊なんだから。
「ははは。そうかな?2人でもこれくらいいつも食べてるもんだよ。2人なんか折れそうなくらい細いからなちゃんとたくさんお食べ。さっ食べようか。」
ジャックさんがチキンをせっせと取りながら言った。
オーストラリアには日本のような「いただきます」という文化はない。
(私たちのためにこんな用意してくれたんだ。。)
そんなウィリアムス夫妻の姿を見ていると少し心が痛んだが、私はサラダにしか手をのばせなかった。
「まりん、またサラダだけなの〜?」
「ちょっと長旅で疲れちゃって食欲がないの。ミアさんジャックさんすみません。」
私は隠れるように下を俯いた。
「疲れて当然よ。無理せず、しっかり今日は休んでね。」
ミアさんはそう言って微笑んだ。
温かい家庭。なんだろう。。
どこか懐かしい気がする。
妙な懐かしさを覚えた。

食事が終わった。
さやかがシャワーを浴び終わったあと、私はシャワールームへと向かった。
半裸になって鏡に映る自分の姿を見てみる。
腕、くびれ、脚いつも通りの私の姿。
今日もちゃんとキープできてる。
とても空腹感はあったが、それを紛らわすようにシャワーを浴び、部屋に戻ると、すやすやとさやかは寝ていた。
「さやか、おやすみ。」
そう囁いて、ベッドに入り眠りについた。

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