第十六王子の建国記

克全

第140話兄弟対決1

「兄弟が現れた」
「それは」
「殺すしかないが、装備が問題だ」
「攻撃反射でございますか」
「そうだ」
「どうなされますか」
「防御魔法を張って対抗するが、いざと言う時は頼む」
「「「はい」」」
次にアレクサンダー王子の行く手を阻んだのは、実の兄弟である王子達であった。
狡猾な魔族は、王子達を殺さず生かして捕らえて、駒として使うことにしたのだった。
しかも王子達は、その地位に相応しい装備を身に付けていた。
国王陛下や王太子殿下には及ばないものの、近衛騎士隊長や近衛騎士団長に匹敵する装備を身に付けていた。
その為、アレクサンダー王子の攻撃魔法は自動的に反射されてしまうし、傷ついた身体も自動回復されてしまう。
「始めるぞ」
「「「はい」」」
アレクサンダー王子の言葉と共に、遠隔地で対峙していた王子達と業火圧縮連弾の戦いが始まった。
始まったとはいっても、業火圧縮連弾が一方的に王子達を攻撃するだけだ。
確かに王子達の装備は素晴らしいモノであったが、アレクサンダー王子の魔法に対抗する力はなかった。
業火圧縮連弾が兜の額部分に穴を開け、兄弟達を絶命させていった。
「どうかなされましたか」
「王子達を殺した反動だ」
「大丈夫ですか」
「少し痛い程度だ」
アレクサンダー王子の受けた自動反射攻撃は、その防具によって攻撃力に限界があった。
本来なら攻撃を受けた魔力の全てを跳ね返すのだが、余りに強大な魔力だと、能力が追い付かなかった。
その事は、アレクサンダー王子の攻撃を受けて初めて分かった事だ。
アレクサンダー王子にとっては些細なモノだが、殺した王子の数、三十九人分の反射攻撃が一斉に襲ってきたので、防御魔法を張っていても、多少の痛みを感じてしまったのだ。
いや、実際に痛みがあったわけではない。
兄弟を殺したことによる幻痛だ。
「皆御逝去なされたのですか」
「出来るだけ苦しむ事のないようにした」
「はい」
パトリックは気を使ってくれていたが、中には何度も殺される王子もいた。
復活・蘇生魔法の護符を身に付けていた王子や、復活・蘇生魔法の組み込まれた防具を身に付けている王子は、生き返った後で再度業火圧縮連弾に焼かれて死ぬことになった。
強力な魔法が仕組まれた鎧を身に付けていた王子は、六度も焼き殺されると言う苦痛を味わった。
一撃で絶命させられる急所を攻撃した。
痛みを感じず殺せる急所を狙った。
それでも何らかの苦痛を与えているのは確実だ。
その事が、実際には何のダメージも受けていないはずのアレクサンダー王子に、胸が張り裂けそうな痛みを与えていた。
ほとんど表情を変えないアレクサンダー王子だったが、パトリック達は王子の苦痛を感じとり、声をかけずにはおられなかった。

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