第十六王子の建国記
第138話女傑
「まだ危機が去ったわけではないのですよ。この国難の時に、権力闘争をするような愚か者を許す訳にはいきません。これ以上騒ぎ立てるなら、後宮より追放するので、自分の力で生き延びなさい」
アレクサンダー王子の母親は、今迄の慈愛の態度が嘘だったかのように冷徹に言い放った。
元々優秀な冒険者であった彼女は、生死の見極めが厳格なのだ。
自分一人だけならともかく、パーティー全体を危険にさらす事は許されない。
特に今回は、大切な息子の名誉と命がかかっているのだ。
「アレクサンダー王子の命令通り、坊壁と坊門の警備は親衛隊の方々に御願しますが、戦闘侍女の方々も、非常時には以前と同じように坊壁と坊門を護っていただきます。宜しいですね」
「「「「はい」」」」」
母親以外の側室や妾に仕える戦闘侍女も、素直に指示に従った。
親衛隊の暴挙を見た影響もあるが、今日まで孤軍奮闘して後宮を護りきった母親への尊敬と信頼が大きかった。
心根の正しい者以外も、今はアレクサンダー王子に着いた方がいいと判断していた。
国王陛下と王太子殿下の生死が不明で、正妃殿下も政務殿に行ったまま戻らない。
次の国王の座に一番近いのは、広大な旧ボニオン公爵領を領地とし、ネッツェ王国を実質的に属国としているアレクサンダー王子だからだ。
「戦闘侍女総長もそれで宜しいですね」
「結構でございます」
「それでも総長も配下の方々も、これからは私の指示で動いて下さい」
「承りました」
現在の後宮は一万人以上の女性が居住している。
全ては現国王の好色が原因だが、それ以前からもそれなりの人数はいた。
だが今では、百人を超える側室と愛妾、彼女らに仕える女官達。
成人を迎える前の王族の世話をする女官達。
後宮全体を維持運営するための女官達。
中でも後宮の警備を担当する戦闘侍女は、正妃殿下の影響が強かった。
「アンリエッタ、切り崩しを図ってちょうだい」
「承りました」
母親は自分専属の戦闘侍女に、後宮戦闘侍女を味方につけるように命じた。
冒険者の頃に世話をした人達の娘を、後宮で預かり行儀見習いをさせていた。
その中でも訳有りの娘には、何処でも生きていけるように手ずから戦闘訓練をつけていた。
そんな訳有りの戦闘侍女の中でも、突出した戦闘能力を誇るのがアンリエッタだった。
彼女は女主人が命を削って祝歌で後宮を護っている間、女主人に悪意の刃が向けられないように警護したいたのだ。
そんなアンリエッタだからこそ、心有る後宮戦闘侍女からも一目置かれていたから、切り崩しを行うのには持ってこいの人選だった。
アレクサンダー王子の母親は、今迄の慈愛の態度が嘘だったかのように冷徹に言い放った。
元々優秀な冒険者であった彼女は、生死の見極めが厳格なのだ。
自分一人だけならともかく、パーティー全体を危険にさらす事は許されない。
特に今回は、大切な息子の名誉と命がかかっているのだ。
「アレクサンダー王子の命令通り、坊壁と坊門の警備は親衛隊の方々に御願しますが、戦闘侍女の方々も、非常時には以前と同じように坊壁と坊門を護っていただきます。宜しいですね」
「「「「はい」」」」」
母親以外の側室や妾に仕える戦闘侍女も、素直に指示に従った。
親衛隊の暴挙を見た影響もあるが、今日まで孤軍奮闘して後宮を護りきった母親への尊敬と信頼が大きかった。
心根の正しい者以外も、今はアレクサンダー王子に着いた方がいいと判断していた。
国王陛下と王太子殿下の生死が不明で、正妃殿下も政務殿に行ったまま戻らない。
次の国王の座に一番近いのは、広大な旧ボニオン公爵領を領地とし、ネッツェ王国を実質的に属国としているアレクサンダー王子だからだ。
「戦闘侍女総長もそれで宜しいですね」
「結構でございます」
「それでも総長も配下の方々も、これからは私の指示で動いて下さい」
「承りました」
現在の後宮は一万人以上の女性が居住している。
全ては現国王の好色が原因だが、それ以前からもそれなりの人数はいた。
だが今では、百人を超える側室と愛妾、彼女らに仕える女官達。
成人を迎える前の王族の世話をする女官達。
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中でも後宮の警備を担当する戦闘侍女は、正妃殿下の影響が強かった。
「アンリエッタ、切り崩しを図ってちょうだい」
「承りました」
母親は自分専属の戦闘侍女に、後宮戦闘侍女を味方につけるように命じた。
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彼女は女主人が命を削って祝歌で後宮を護っている間、女主人に悪意の刃が向けられないように警護したいたのだ。
そんなアンリエッタだからこそ、心有る後宮戦闘侍女からも一目置かれていたから、切り崩しを行うのには持ってこいの人選だった。
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