第十六王子の建国記

克全

第90話再会

「村長、狩りは順調なのか」
「それが若殿様、魔獣の密度が濃く、レベルも高すぎて、思うように狩ることが出来ません」
「全く狩れないと言うわけではないのだな」
「はい。何とか飢えることがない程度には狩れているのですが、御代官様が望まれるような質や量は、とても狩ることが出来ません」
「では余が手伝ってやろう」
「有難い事ではございますが、具体的にどうしてくださるのでしょうか」
「余が強敵を奥地に引っ張って行くから、残った銅級や鉄級を狩ればいい」
「それでは数は狩れますが、質が追い付きません」
「質は余が税として治める分で補えばいい。村長は村人を飢えさせない事を優先しろ」
「そうでございますね。若殿様の仰られる通りでございます」
「では人手を集めてくれ」
「承りました」
「おにいちゃん!」
「おお、マギーか。元気にしていたかい」
「おにいちゃん。おにいちゃん。おにいちゃん。おにいちゃん」
「何を泣いているのかな。おかあさんは元気にしているかい」
「若様、御久し振りでございます。その説は大変世話になりました。受けた御恩の大きさに、御礼の言葉もありません」
「当たり前の事をしただけだ。ギネスが恩に感じる必要などないよ
「いえ。若様に助けて頂いていなければ、私もマギーも、言葉に言い表せないような、汚辱に満ちた悲惨な暮らしを強いられていたとこでしょう。心から感謝しております」
「それでギネスさん、村の狩りは厳しい状態だと聞いたのだが、ちゃんと食べていけているのか」
「確かに厳しい状況ではありますが、若様に助けて頂いたころよりは、食べ物にも恵まれております」
「おにいちゃん。またおにいちゃんといっしょに、おなかいっぱいごはんがたべたい」
「これ、マギー。若様に無理を言ってはいけません」
「だって、おかあさん。うぇ~ん」
「よしよし。御兄ちゃんは狩りに行くから、先に御母さんに御飯を作ってもらいなさい」
「おにいちゃんといっしょじゃないの」
「御兄ちゃんは、沢山美味しいものを狩って来るから、先に食べていなさい」
「さびしい・・・・・いっしょがいい」
「これ、マギー。勝手を言ってはいけません」
「うぇ~ん」
「まぁまぁまぁ、マギーさんはこれで村人に炊き出しを作ってやって下さい」
余は魔法袋の中から、わずかに残った銅級と鉄級の魔獣と魔蟲を取り出して渡した。
「分かりました。皆喜ぶと思います」
「若殿様、ありがとうございます」
「村長、村に備蓄がないようだから、狩人が集まる前に少し狩って来る」
「申し訳ございません。私に指導力と実力があれば、もう少し余裕があったかもしれないのですが」
「気にするな。皆がやれることを堅実にやるしかなのだ」
「はい、若殿様」
さて、ボニオン魔境騎士団領の民だけではなく、アゼス魔境周辺の獣人達の為にも、本気で狩りまくるしかないな!

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品