第十六王子の建国記
第60話訴訟2
「さて、今回の訴訟に対する判決を下す前に、今一度原告アレクサンダー・ウィリアム・ヘンリー・アルバート・アリステラ王子に聞く。この提訴を取り下げる気はないのだな」
「ありません」
「貴君が代理で提訴した、アンドルー・パトリック・デイヴィッド・エドモント・アリステラ王子の配下、クラレンス・マブット士爵が提訴を取り下げているのにか?」
「陛下。事は公爵家を取り潰しにし、公爵以下一族一門を始め、陪臣士族卒族全てを売国罪、内通罪、魔境管理不十分で処刑するほどの事件でございます」
「うむ」
「その重大事件に関連し、陛下の大切な臣民を拉致し、犯罪奴隷として性奴隷に落とした者が、アンドルー・パトリック・デイヴィッド・エドモント・アリステラ王子に賄賂を贈り、」
「あいや、御待ち下さい!」
「黙れ、痴れ者!」
父王陛下が珍しく烈火のごとき怒声を落とされた!
審理の場にいた重臣や関係者の間に、異様な緊張感が広まった。
正妃殿下や王太子殿下は、アンドルー・パトリック・デイヴィッド・エドモント・アリステラ王子の配下がしでかした汚職を隠蔽すべく、各方面に手を打っていた。
余も対抗手段を講じたが、搦手で正妃殿下に勝てるはずもなく、サウスボニオンの民を護るのに精一杯だったが、公式書類や判例を残すために、提訴を取り下げる事だけはしなかった。
父王陛下も穏便に済まそうとしていると思っていたのだが、違うのかもしれない。
「続けなさい」
「はい、陛下。アンドルー・パトリック・デイヴィッド・エドモント・アリステラ王子に賄賂を贈り、自分達の罪を隠蔽するに留まらず、再び陛下の大切な臣民を拉致し、犯罪奴隷として性奴隷に落とそうとしたのでございます」
「陛下、御恐れながら」
「余は黙れと申したはずだ。ハミッシュ・マブット子爵」
父王陛下は汚物を見るような目でハミッシュ・マブット子爵に目を遣り、氷のように冷たい話し方でこれ以上の言動を押しとどめられた。
「エイダ。その方の友人は、余に叛意を持っているのかな?」
「いえ、決してそのような事はございません」
「ではその方が余に叛意を持っているのかな?!」
「陛下からそのようなお言葉を賜るとは、御情けのうございます」
「情けないのは余の方だ」
「陛下、何を申されておられるのですか!?」
「その方なら、子供の育て方を間違えるとは思わなかったのだが、アンドルーは随分無能で恥知らずに育ってしまったようだな」
「それは違います! アンドルーは騙されたのでございます!」
「家臣に騙され踊らされるのは無能の証。家臣の犯罪を知っても正さず、隠蔽しようとするのは恥知らずの証。それに協力するは下劣の証。若き頃のその方は、正義感にあふれていたのだがな」
「それは陛下の所為ではありませんか! 陛下が私を、この様な権謀術数が渦巻き汚職に塗れた後宮に、閉じ込められたあのではありませんか!」
「確かに余の責任でもあるが、だからと言ってアンドルーをこのような者に育てた責任は逃れられない」
「陛下にも子供を育てる責任があるのではありませんか」
「そうだ。責任があるからこそ、今ここで正すのだ!」
やれやれ、思っていた以上の大事になりそうだ。
民にとばっちりが行かなければいいのだが。
「ありません」
「貴君が代理で提訴した、アンドルー・パトリック・デイヴィッド・エドモント・アリステラ王子の配下、クラレンス・マブット士爵が提訴を取り下げているのにか?」
「陛下。事は公爵家を取り潰しにし、公爵以下一族一門を始め、陪臣士族卒族全てを売国罪、内通罪、魔境管理不十分で処刑するほどの事件でございます」
「うむ」
「その重大事件に関連し、陛下の大切な臣民を拉致し、犯罪奴隷として性奴隷に落とした者が、アンドルー・パトリック・デイヴィッド・エドモント・アリステラ王子に賄賂を贈り、」
「あいや、御待ち下さい!」
「黙れ、痴れ者!」
父王陛下が珍しく烈火のごとき怒声を落とされた!
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父王陛下も穏便に済まそうとしていると思っていたのだが、違うのかもしれない。
「続けなさい」
「はい、陛下。アンドルー・パトリック・デイヴィッド・エドモント・アリステラ王子に賄賂を贈り、自分達の罪を隠蔽するに留まらず、再び陛下の大切な臣民を拉致し、犯罪奴隷として性奴隷に落とそうとしたのでございます」
「陛下、御恐れながら」
「余は黙れと申したはずだ。ハミッシュ・マブット子爵」
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「エイダ。その方の友人は、余に叛意を持っているのかな?」
「いえ、決してそのような事はございません」
「ではその方が余に叛意を持っているのかな?!」
「陛下からそのようなお言葉を賜るとは、御情けのうございます」
「情けないのは余の方だ」
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