第十六王子の建国記

克全

第50話再会

「おおおお、よく無事で。生きていてくれたのだな」
「あんた! ごめんよ。ごめんよ」
「兄さん」
「よく無事で生きていてくれた」
「おにいちゃん!」
あちらこちらで、生きて二度と会えないと思っていた家族に再び会えて、感動の涙を流す者達がいる。
そんな家族の感動の再会に水を差すことになるのだが、女達の健康診断と治療をしなければいけない。
女達は強制的に売春をさせられていた。
それも非情に劣悪な環境でだ!
だから栄養状態は悪いし、望まぬ妊娠をしている可能性もある。
身体を治してあげるのは当然だが、分からぬように堕胎もしてあげないといけない。
夫や恋人と再会できて、過去を忘れて新たな生活を始めたくても、誰とも分からない他人の子供がいては難しい事もある。
胎の中の子には何の罪もない。
母性で産みたいという女もいるだろう。
だがそれが、夫や恋人、いや、家族の間に無視できない棘となり続ける可能性が高い。
だから助け出すまでの間に、男達に話し合ってもらっていたのだ。
妻や恋人が他人の子供を宿していたり、他人の子を産んでいたりした場合、どう対応するのか。
男達も色々悩んだのだろうが、結論は堕胎するという事だった。
男達は、他人の子と自分の子を同じように可愛がる自信がないと、正直に話してくれた。
勇気がいる事だと思う。
赤の他人は、彼らの苦しみや哀しみを思いやることもなく、薄っぺらい理想を口にして、さらなる苦しみと重荷を背負わせようとするだろう。
今回の決断に対しても、理想論を口にして非難するだろう。
だが妻や恋人と幸せな生活を再開するには、どちらかを決断しなければいけない事だった。
だから余は手伝うことにした。
女達にはケガや病気の治療をすると伝え、受胎していた場合は水に流すことにした。
幸いなことなのかどうかは判断できないが、子供を連れた女はいなかった。
売春の邪魔になると、妊娠したら強制的に堕胎させられていたようだ。
だがその所為で妊娠できなくなっていた女がいた。
そんな女には何も言わずに治療しておいた。
性病や死病に罹っていた女もいたが、全て黙って治療しておいた。
だが体力までは直ぐに元通りに出来ない。
最低限の食事しか与えられないかった女達は、領境を超える移動は難しかった。
そこでボニオン魔境内に村を築くことにした。
圧縮強化魔法で岩盤板を創り出し、岩作りの家を創り出した。
一家族に一軒の家を作った。
再会を喜ぶ家族の為に家を創り出すのは愉しかった。
今迄で一番楽しい仕事だったかもしれない。
だが、中々家族に再会出来ない男もいた。
彼の妻や娘が生きていてくれればいいのだが。
全てがパーピーエンドになるとは限らない。
だがそんな彼が、自分の哀しみや不安を押し殺し、友の家族との再会を一緒に喜んでいる。

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