第十六王子の建国記

克全

第48話再攻撃2

士道不覚悟のボニオン公爵家騎士団に同情の余地などない。
全く同情する必要はないと思う。
だがこの状況は、凄惨であった。
同じ武人としては情けない事ではあるが、不意を討たれたとは言え、全く魔獣に歯が立たない。
いや、不意を討たれることが士道不覚悟なのだ。
それにしても、魔境から魔獣が出たと言う非常事態で動員されたと言うのに、天幕の中にこもり、周囲を全く警戒していないとは、冒険者や猟師以下に堕している。
ほとんどの騎士が、フルアーマープレートどころか鎖帷子すら着込んでいない。
それどころか、売春婦を駐屯地に連れ込んでいるではないか!
いや、もしかしたら、近くの村から人妻や娘を無理矢理拉致してきたのかもしれない。
これは余が迂闊だった。
彼女らを巻き込むわけにはいかない。
「防御・防御・防御・防御・防御・防御」
「防御・防御・防御・防御・防御・防御」
爺も余と同時に女達に気が付いたのだろう。
余と同じように防御魔法を女達にかけている。
何とか防御魔法が間に合って、女達がブラッディベアーに殺されることも傷つけられ事もなかった。
だが騎士や兵士は別だ。
ブラッディベアーの爪撃を受けて、一撃で肉片にされている。
情けない事だが、ブラッディベアーが突っ込んだ場所から離れた場所にいた騎士や兵士は、武器を手に戦いを挑むのではなく、着の身着のまま逃げ出した!
情けなくて、情けなくて、直接この手でぶちのめしたくなるが、ここはぐっとこらえて、ブラッディベアーをけしかけるだけにした。
爺が防御魔法を応用して、女達を押し出し、逃げるように誘導する。
これは前回にやった方法だが、ボニオン公爵家騎士団か余りに醜態をさらすので、使う事を思いつなかった。
爺が側にいてくれてよかった。
弱い者達への配慮は、爺の方ができる。
余の生まれ育ちでは、どうしても配慮に欠けるところあるのだろう。
爺には長生きしてもらって、これからも余の足らないところを補ってもらいた。
などと考えているうちに、ボニオン公爵家騎士団駐屯地は壊滅した。
ブラッディベアーの爪撃を受けて、天幕の柱は全てへし折られ、布地もズタズタに引き裂かれている。
中にいた騎士と兵士が肉片に変えられた時に周囲に飛び散った血液で、真っ赤に染まっている。
地獄絵図としか言えない状況だ。
だがこれで終わるわけにはいかない。
このような無様で役立たずの騎士と兵士なら、何の遠慮も躊躇もいらない。
「爺、一匹頼んだぞ」
「御任せ下さい」
逃げた騎士と兵士を追撃しなければいけない。
出来れば皆殺しにして、公爵家にもっと圧力をかけたいのだ。

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