第十六王子の建国記

克全

第46話捕虜

「この騎士達は殺さないでもらいたい」
「逃げようとしても、殺してはいけないのですか?」
「ああ、絶対に殺してはいけない」
「何故ですか」
「こいつらはまがりなりにも騎士だ。公爵家に仕える騎士が、公爵家の非道を証言してくれれば、御前達が公爵家の罠に嵌められた証拠になる」
「下劣な公爵家の騎士が、本当の事を言うはずがありません」
「大丈夫だ。我々が必ず証言させる。嘘偽りを言えば、徐々に身体が腐り、死にも勝る激痛に苛まれる呪いをかけてある。だから必ず真実を話す」
「なんだと!」
「いつそのような呪いをかけたのだ」
「この卑怯者」
「身分卑しい平民の癖に、騎士に呪いをかけるなど言語道断だ」
「直ぐに呪いを解き、我々を解放しろ」
「こいつらこんな事を言っていますが、本当に殺さないのですか?」
「ああ、殺さない。死ぬよりも辛い苦しみを与えるよ」
「どうなさるのですか?」
「こうするのさ」
余は助けた村人達の目の前で、大々的に土魔法を使った。
九騎士達が身ぐるみ剥がれ、下着姿で放り出されている下の地面を、一気に三十メートル陥没させたのだ!
「「「「「ぎゃぁ~」」」」」
騎士とは思えない、情けない悲鳴を上げて、八人の騎士は奈落の底に急降下した。
落ちたわけではなく、地面が下がっただけなので、それほど恐怖を感じないはずなのだが、初めての感覚が恐ろしかったのだろう。
だが騎士長だけは奈落の底に落とされても、一人毅然とした態度を崩さない。
下着姿で放り出されてはいても、鍛え抜かれた心身は他の騎士と全然違う。
「こ、こ、これは!」
「これでは逃げようがないだろう」
「は、はい」
「これで逃げられるとしたら、御前達の中に内通者がおり、協力した場合だけだ」
「はい」
「そんな事をしたら、今我々仲間が救助に向かっている、御前達の家族を助けられなくなるのは分かるな」
「「「「「はい」」」」」
「我々も公爵家に楯突く以上、命をかけて御前達を助けたのだ。それは分かるな」
「「「「「「はい」」」」」
「その我々が、この騎士達の証言が必要だと言っているのだ。絶対に殺すんじゃない」
「「「「「「はい」」」」」
「それでこいつらの持っていた武器と鎧だが、御前達の中で使える者がいるのなら与えよう。装備して非常時に備えてもらいたい」
「非常時ですか?」
「魔獣は賢いから、俺達の気配がある所には近づいてこないが、馬鹿な公爵軍はここにやってくるかもしれない」
「なるほど。ですが残念ですが、これはいただけません」
「何故だ」
「我々は猟師です。このような装備を身に着けたら、弱くなってしまいます。我々の身上は、気配を消しての奇襲なのです」
「分かった。ならば今まで通りのやり方で警戒してくれ」
「分かりました」

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