婚約破棄された王太女は召喚勇者の生贄にされる。

克全

第1話カミラ王女視点

私は醜い。
だから婚約を破棄され、生贄にされてしまう。
そんな風に考えたら、亡き母上様が哀しまれる。
美しく生まれていたとしても、女王に成りたい妹と、自分の娘を王女にしたい義母と、外戚としてムーア王国に影響力を及ぼしたい、ミルズ王国のイザヤ王の謀略で生贄にされていたでしょう。

でも、どうしても思ってしまいます。
美しく産まれていたら、ルークは私との婚約を破棄しかなったのではないかと。
妹のハンナと婚約をする事はなかったのではないかと。
私を生贄にする事に反対してくれたのではないかと。
そう思ってしまいます。

義母と半妹には、物心ついてからずっと悪口を言われてきました。
義母付きの侍女にも、聞こえよがしの陰口を言われ続けました。
骸骨のような王女。
スケルトンのような王女。
怪物のような王女。

父の国王は、それを止めてくれませんでした。
それどころか、私に会わないようにしました。
私の容姿を見るのはおぞましいのだそうです。
身ぶるいするほどいやな感じがすると言うのです。
実の娘だと言うのに、そんな風に陰で悪口を言っているのです。

父である国王がそんな事を言うのですから、貴族も同じように陰口を言います。
いつしか社交界では、陰で私の事を怪物王女と呼ぶようになったそうです。
それも仕方がないかもしれません。
私のデビュタントに来て、私の容姿を見て、恐ろしさのあまり気を失う令嬢がいました。
可哀想に、失禁までしていたと、後で聞きました。

それ以来、私は舞踏会や晩餐会に参加していません。
王も義母も、私を式典に呼びません。
第一王女であるにもかかわらず、公私一切の行事に呼ばれたことがありません。
そのお陰というのは哀しいですが、貴族も私に招待状を送らなくて済むのです。
送られてきても出席する気はありませんが、寂しく哀しいです。

でも決して味方がいない訳ではありませんでした。
醜い私の事を心から愛してくれる肉親もいました。
父の弟ジョンは、私の醜い容姿に顔色一つ変えずに、抱き上げ頬ずりまでしてくれました。
私に産まれて初めてスキンシップを示してくれたのはジョンでした。
涙が出るほどうれしかったです。

母の弟ルイスも、私の醜い容姿を気にする事なく接してくれます。
主従のけじめをつける性格なので、スキンシップはないですが、溢れんばかりの愛情を全身で表現してくれます。
いつも哀しい思いをしている私の為に、シャイな叔父が一生懸命大袈裟に愛情を表に出してくれたのです。

ですが、女性で私に優しく接してくれる者はいませんでした。

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