前世水乙女の公爵令嬢は婚約破棄を宣言されました。

克全

第33話

シャーロットが最初の種に選んだのは、砂漠を渡る人間の雄だった。
願っているような強い子は産まれなかったが、それでも子供は可愛かった。
それに育つのが早かった。
交尾相手の人間よりはとても成長が遅いが、竜に比べれば劇的に早い。
それに群れを作る事も出来るようだった。

出来の悪い子供ほど可愛いと言うのは、竜にも当てはまった。
弱く醜い子供だからこそ、可愛くて仕方がなかった。
何としても成体にまで生かしてやりたかった。
成体になれば、今の弱くて醜い姿から、竜に転ずるかもしれなかった。
子供達同士が交尾すれば、竜の子が生まれるかもしれないとも思った。

だから多くの種を求めた。
砂漠を渡る人間だけではなく、水精霊が護る国の人間も手に入れた。
そこで国の仕組みを知った。
どうせ人間を交尾相手に選ぶなら、ボスの種を求める事にした。
少しづつ高い地位の人間を交尾相手に選んだ。
メイヤー公爵も選んだし、王太子も選んだ。

この国を子供達の牧場にするには、メイヤー公爵と王太子は利用できると思った。
だがやり過ぎて、国を崩壊させてしまった。
王太子だけは確保していたが、もう役に立たなくなった。
弱く卑しい人間の中でも、王太子は特に劣る。
もう相手に選ぶ必要などない。

だから子供達の餌にする事にした。
種が違う人間等に愛情などない。
同種の交尾でも、終わった後に雌が雄を食べる事はよくある。
まして別種だ。
自分が食べる訳ではなく、可愛い子供達を生かし育てる為だ。
父親冥利だろう。

王太子は身体中を喰い千切られらた。
小さな鋭い沢山の歯で、肉を喰い千切られた。
直ぐに死ねたら楽だっただろう。
だが直ぐには死なせてもらえなかった。
国が崩壊して人間の補充に不安があったのだ。

火竜は沢山の人間を巣に蓄えていた。
王太子・メイヤー公爵・逃げ損ねた多くの人間だ。
国が蓄えていた食糧もだ。
その食糧を王太子以下の肥育人間に与え、軽い治癒魔法を使った。
彼らは毎日自分の子供であるドラゴニュートに身体を喰われた。
自分の子供に肉を喰い千切られた。

気が狂うほどの激痛だった。
王太子とメイヤー公爵は死を願った。
慈悲を求めた。
だがそんなモノは与えられなかった。
多くの血と肉を失い、死にかけたことはある。
だがギリギリで、死なないように喰われるのが中止された。

火竜は慣れていた。
交尾相手に使った人間を餌にして、子供を育てる事に。
喰われた傷が激烈な痛みを与える。
軽い治癒魔法では完治はしない。
死なないだけで、治りかけの傷は痛みを与え続ける。

痛みが軽くなり、傷がいえた頃にまた喰われる。
自分の子供に喰われる。
終わる事のない永劫の地獄だった。

「前世水乙女の公爵令嬢は婚約破棄を宣言されました。」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「恋愛」の人気作品

コメント

コメントを書く