前世水乙女の公爵令嬢は婚約破棄を宣言されました。

克全

第19話

「なんでぇ!
精霊の怒りなんてないじゃないか!
おい。
俺達も飲みに行くぞ」

「「「「「おう」」」」」
「どけ!
俺達が先に飲むんだよ。
どきやがれ!」

下士待遇となった王太子やメイヤー公爵の私兵達が、精霊の怒りが本当にあるのか確かめるために、囮として小川に行かした雑兵達を蹴り飛ばし、自分達が水を飲みだした。
その態度は酷く、祈りも捧げなければ、感謝の気持ちも微塵もない。
中には汚い身体で小川に入る者までいた。

「うぎゃぁぁぁ」
「うぼぅぅぼ」
「ぎゅぅおぼ」

いきなり、下士待遇の私兵が苦しみだした。
中には小川に引きずり込まれる者までいた。
雑兵達は、唖然として見ていた。
いや、自分達も小川に入ろうとしていた、騎士や徒士まで呆然としている。

「お怒りなんだ。
精霊様が、王太子やメイヤー公爵にお怒りなんだ」
「やっぱり、シャーロットは偽物なんだ。
本当の水乙女様は、カチュア公女様なんだ」

あちらこちらから、雑兵達の呟きが聞こえてくる。
だが、その声をかき消す程の悲鳴があがっている。
礼儀知らずの私兵達が、精霊の怒りを受けていた。
その多くが、税を払えない家の女を、気が狂うまで輪姦した者達だった。

水の精霊は、乙女を友とする精霊だった。
自身が清浄であるため、極端に汚れを嫌う性質があった。
その水精霊が、穢れの塊のような、私兵達を許すはずがなかった。
今迄の悪行に相応しい方法で死を与えた。

小川に入り込んだ無礼な私兵には、身体中の穴から激流を注ぎこんだ。
特に尿道からは、砂と一緒に大量の水を流し込んだ。
その激痛は、眼を剥き悶絶するほどだった。
だが直ぐに殺したりはしなかった。

直ぐに殺すほど優しくはなかった。
死ぬ直前で水と砂を流し込むのを止め、今度は身体から水と砂を流し出すのだ。
死なないように加減しながら、何度も水と砂を、身体から出し入れして、永劫の激痛地獄を味わわそうとした。

まるでそれは、長時間繰り返し狂うまで輪姦された女性達の苦しみを、私兵達に思い知らせているようだった。
小川の中に入らなかった私兵も、飲んだ水が胃の中で暴れ出した。
水が胃壁を内部から針のように刺し、激痛を与えるのだ。
いや、胃だけではない。

食道も小腸の大腸も、飲んだ水が暴れ回って、内臓の全てを刺していくのだ。
その激痛は耐えられるのもではなく、滑稽な姿で踊っているようにみえるほど、荒野を暴れ回るほどだった。
中には地面をのたうち回る者もいた。
だが彼らも、直ぐに死なせてはもらえなかった。

最初は直属指揮官の徒士や騎士も、私兵達がふざけていると勘違いしていた。
だがそれが、激痛にのたうち回っている姿だと気が付き、血の気が一気に引いた。
本当に自分達が、精霊様の逆鱗に触れたのだと悟ったのだ。
まず王太子が逃げ出した。

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