大国王女の謀略で婚約破棄され 追放になった小国王子は、 ほのぼのとした日常を望む最強魔法使いでした。

克全

第201話紅花村2

「それはいったいどう言う事だ」
「どうと申されましても、御代官様からの御達しでございますから、我々に言われてもどうしようもございません。むしろお叱りを受ける方が理不尽と申し上げます」
「我々は王家直轄の巡検使である。その我々が知らない命令があるとは、不審ではないか」
「その不審な命令を下したのは、王家から任命された御代官様です。王家王国内の問題は、王家王国内で始末をつけていただきたいと、我々百姓は願うばかりであります」
村長の言葉遣いは丁寧だが、内容は王国内政批判だから、処罰しようと思えば出来る。
だが、本音を聞きたくて、わざとおかしな言い方をしたのだから、罰する心算など毛頭ない。
それにこういう性根の座った村長が相手なら、腹を割った話が可能だ。
それにしても、貴重な紅花畑を潰せなどと、愚かな私的命令を下したものだ。
「そうだな。王家王国で話を付けるべき内容だが、その為には詳しい話を聞いておく必要がある」
「はい。なんなりと御聞き下さい」
「紅花畑を潰す大義名分はなんなのだ」
「食糧不足なので、紅花なんて役立たずなモノは作らず、麦や芋を作れと言う御達しでございます」
なるほど。
食糧不足を大義名分にしているのか。
だが、余とガビの魔晶石使い魔が、毎日必要なだけの魔獣や魔蟲を狩っている。
それがこの村に届いていないとしたら、輸送網の不備か、意識的に行き渡らないようにしているかだ。
「実際この村では食糧が足らないのか」
「ぎりぎりでございます」
「紅花は高価に取引されているのだから、他の村よりは有利に買えるのではないか」
「それを巡検使様が申されるのですか」
「どう言う意味だ」
「前王国の時から、紅花は国に安く買い叩かれております」
矢張りそう言う事か。
前王国はともかく、ガビが女王として統治している現連合王国は、自由経済を基本としている。
私利私欲を貪る代官が、変更を命じられたのにも関わらず、今も前王国の政策を踏襲しているのだな。
他にもこのような事例は多いだろう。
直ぐにもっと多くの魔晶石使い魔巡検使を差し向けなければならない。
そうしなければ、ガビが怒りだして大変なことになる。
現に今も凄い立腹だ。
「それは代官の不正だな」
「どう言う事でございますか」
「ガブリエラ女王陛下が王位に就かれて直ぐに、前王家王国の法が改正され、民の自由な商売が認められたのだ」
「そんな事は、全く存じませんでした」
「代官が己の私利私欲の為に、女王陛下の御慈悲を握り潰したのだ」
「どのような御慈悲も、愚かな臣下を召し抱えていては無意味でございます」
「そう言うな。この度の大災害で、女王陛下は望むと望まざるとにかかわらず、多くの国を統治せねばならなくなったのだ」
「そうは申されますが、その為に我々は食うや食わずの生活をし、先祖伝来の紅花作りまで止めねばならなくなったのです」

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