大国王女の謀略で婚約破棄され 追放になった小国王子は、 ほのぼのとした日常を望む最強魔法使いでした。

克全

第196話陶芸村3

「私の作品も見て下さい」
「何を言う。女風情が巡検使様に作品を見せるなど、畏れ多いにも程がある」
「そうだ。婢女から産まれた下賤な者が、のこのことこのような場に出てくるとは、恥知らずにも程がある」
「やはり母親の下賤な血は争えん」
「わらわから見れば、おぬしらも同じ下賤な者じゃ」
ガビが底冷えするほどの冷たい言葉を放った。
商人達は、慌てて陶工達の口を塞ぎ、その場に引きずり倒した。
この場で斬り捨てられると感じたのだろう。
やはり商人の勘と言うのは鋭い。
「その通りだ。御前らのような下賤な者を、この場に顔を出すのを許しているのは、ひとえに陶芸家としての技術を見るためだけだ。下賤な者同士の、更なる階級争いなど、余達には一切関係ない」
「はい。はい。はい。我らが悪うございました」
「卑しい争いを、高貴な方の御見せして申し訳ありません」
さて。
だが、影で才能ある陶工を始末されるようなことがあれば、文化の損失だ。
余自身は文化に興味ないが、ガビ達ミカサ一族は文化文芸の保護に熱心だから、余も婿養子になる以上そうしなければならない。
「念のために言っておくが、有望な陶芸家を金儲けの為に潰したり殺したりしたら、一族皆殺しにするからね」
「やりません。やりません。決してそのような事は致しません」
「王家に逆らうような真似は、決して致しません」
「……」
やれやれ。
既に悪事に手を染めた奴がいるようだ。
買占めや劣悪品の売買だけでなく、脅迫や傷害、殺人にまで手を染めているかもしれない。
「そこの娘さん」
「はい」
「正直に話して欲しいのだが、脅かされたり傷つけられたりした陶工はいるのかね」
「そのような事はございません」
ボッゴォー
魔晶石使い魔の一体が、風のような速さで、口を挟んだ商人をぶちのめした。
確実に肋骨が三本折れている。
内臓にも大きな損傷があるだろう。
連続で三本の肋骨が折れたら、正常な呼吸も難しい。
「横から口を出すな。下郎。娘さん、正直に話して欲しい」
「はい、ありがとうございます。真面目で腕の立つ陶工が、この商人の贋作を作れと言う強引な誘いを断ったため、大切な腕を折られて、二度と作品が作れない身体にされてしまいました」
「そうか。よく分かった」
「うっ、うっ、うそでぇ、うっぐぉぉ」
激痛にのたうち回っていた商人が、このままでは身の破滅と、半死半生の身体で言い訳をしようとしたのだが、またも魔晶石使い魔にぶちのめされた。
折れた同じ胸を蹴り上げられ、上から下まで十本の肋骨が折れたようだ。
幾本かの肋骨が肺に突き刺さり、大量出血をしているのだろう。
のたうち回りながら、この場で血を吐いている。
「この者を厳重に取り調べよ」

          

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