大国王女の謀略で婚約破棄され 追放になった小国王子は、 ほのぼのとした日常を望む最強魔法使いでした。

克全

第190話処断

「私がやりました。どうか、どうか、もう許して下さい。いっそ殺して下さい」
拷問官の技術は、恐ろしいくらい痛みをコントロール出来るようだ。
今回は三十三分で全てを自白させた。
単純に拷問している時間だけではなく、名主が自白している時間もある。
下郎共とは違って、色々と聞き取らなければならないから、拷問時間は短いだろう。
実際の拷問は見ていない。
正直おぞましくて見られない。
だが、剥がされた爪や、潰された指を見れば、どれほど激しい拷問であったかが分かる。
言葉通り、殺してもらった方が楽だと思えるくらい、激しい拷問だったのだろう。
名主の証言で、全ての村役人が逮捕された。
名主一人の犯罪ではなく、村ぐるみの奴隷売買であったようだ。
中には見て見ぬ振りで、直接参加しなかった自作農もいたようだが、犯罪の黙認も許されない。
名主達のように、半ば死刑の終身鉱山労働刑という訳ではないが、十年の重労働刑が科せられる。
名主や自作農が抱えていた、家人や小作農が数多くいた。
奴隷売買に係わっていない者は、王国の小作農として、名主達から没収した農地を貸し与えることになった。
奴隷売買に係わっている者は、当然終身鉱山労働刑だ。
劣悪な環境の鉱山労働は、平均十年で死ぬことになる。
「私に名主の役目が務まるでしょうか」
「大丈夫。我が助ける」
「御役人様に助けて頂けるのなら、何とかやっていけると思います」
「心配いらない」
「エイベル様。微力ではございますが、私も御手伝いさせていただきます」
「そうか、ありがとう。アルフィン」
名主の息子・エイベルは、思っていた通り少々気が弱いようだ。
それに比べて恋人のアルフィンは、結構度胸があるようだ。
名主が悪口を言っていたが、本当にエイベルを誘惑したのかもしれない。
まあ、男女の色恋だから、少々の駆け引きは当然ある。
エイベルが先にアルフィンに恋したのか、アルフィンがエイベルに恋したのかは、当人にしか分からない事だろう。
エイベルが恋したように見えて、アルフィンに誘惑された可能性もあれば、アルフィン美しさに魅かれて、気弱なエイベルが一念発起した可能性もある。
万が一アルフィンが稀代の悪女で、名主家に入り込もうとしたのであっても、悪事を働かない限り何の問題もない。
それに、魔界から無尽蔵の魔力が得られるようになったから、玉鋼級以上の魔晶石使い魔を魔力輸送に使えば、無数の白金級以下の魔晶石使い魔を、国の役人や兵士として休みなしに働かせることが出来る。
エイベルや小作農の代表が一人前になる間くらいは、銅級魔晶石使い魔十体を派遣するくらい容易い事だ。

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