大国王女の謀略で婚約破棄され 追放になった小国王子は、 ほのぼのとした日常を望む最強魔法使いでした。

克全

第148話街造り

「ルイ様、住民が城壁を造って欲しいと願い出ております」
「よその国の街に、勝手に城壁を造る事など出来んよ」
ガブリエラの親衛隊の一人が、街の警備の時に、住民から嘆願を聞いてきたのだ。
「ですがルイ様、既にこの国は、ルイ様は統治しているようなモノではありませんか」
「そんなことはないよ。この国にはこの国にあった統治方法があり、それはこの国の人々が考えるべきだよ」
「ですがルイ様、王族を始め、多くの指導者たちが死んでしまっています」
「その通りではあるけれど、だからと言って僕が統治する訳にはいかないよ」
「ベル王家のシキタリですか」
「そうだよ。だから以前も、ミカサ公爵家に御願しただろ」
「ですがルイ様、ルイ様が指導者に立たないと、権力を欲する愚者共が戦いを始めてしまい、多くの人が戦に巻き込まれて死んでしまいます」
「それはそうなんだけど」
「力と正義の心を持った者が指導者にならないと、邪心を持った者が、力に任せて弱者から全てを奪う、乱世の国になってしまいますよ」
「ガビの言う通りだとは思うけど、だからと言って、ベル家の家訓を破る訳にはいかなのだよ」
「では、私がルイ様に成り代わって統治すると言うのはどうでしょうか」
「そうしてくれれば僕は助かるけれど、ミカサ公爵家は大丈夫なのかい。それでなくても、以前統治を任せた国の所為で、色々と忙しいと聞いているよ」
「確かに忙しい事は忙しいですが、力有る者が上に立てば、大抵の邪心は表に出ないモノです。そうすることが出来れば、元々の国民に統治の大半を移譲する事が出来ます」
「そうか。有難う。ガビやミカサ公爵家の人達に、これ以上負担をかけるのは忍びないけれど、住民たちの為に頑張ってくれるかい」
「御任せ下さい」
魔界から魔族やスライムが湧き出てこなくなってから七日七晩、ルイとガブリエラは、親衛隊を率いて不眠不休で戦った。
住民たちも、親衛隊の指導を受けて、松明を使ってスライム退治を始めた。
家や仕事を失い、難民となって毎日の食べ物にも困るようになった人たちには、ルイが莫大な量の食糧を貸し与えた。
人々の自立心を奪い、怠惰な人間にしないように、無償で与えるのではなく、貸し与えることにした。
それはガブリエラの指導があったのだ。
ガブリエラには慈愛の心があったので、人間を堕落した生き物にしてはならないと言う、理想に従った統治を行う予定だった。
今回の魔族騒動で、王家が滅んだ国や、内政と軍隊が崩壊した国がある。
そんな国は逸早く統治と軍事力を再建しなければ、国内が戦国時代となるのはもちろん、隣国が攻め込んできてしまう。
そんな事態にさせないためには、強力な軍事力を持った新国家を立てるしかなかったのだ。

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