大国王女の謀略で婚約破棄され 追放になった小国王子は、 ほのぼのとした日常を望む最強魔法使いでした。

克全

第139話魔王の準備

「あれを用意しろ」
「そこまでする必要がありますか?」
「余のこの姿を見て、その様な事を聞くのか?」
「申し訳ありません」
「分かったら全力で急いで用意せよ」
「承りました」
「父王陛下」
「何だ?」
「私に迎撃をお命じください」
「ダメだ」
「なぜでございますか?!」
「あれは恐ろしく強い。普通に戦ったのでは、余でも勝てまい」
「父王陛下が勝てないから、私も勝てないと申されるのですか?!」
「お前はいずれ余の後を継いで、魔界を統べる存在だ」
「はい。そのつもりで精進してまいりました」
「だったら正面から勝つだけではなく、できるだけ余力を残して勝つことを考えよ」
「しかしながら父王陛下。多くの魔族を従えるには、力を見せつけるべきなのではありませんか!」
「よく魔界を探ってみよ。余から距離を取っている一族が領地にとどまり、余と侵入者の戦いの様子を見ておる」
「まさか?! 父王陛下が負けるのを望んでいると?!」
「そうだ。いや、それだけではない。魔王の地位を狙って、余と侵入者を同時に倒そうとしているのだ」
「それでは、ただ勝つだけではなく、謀叛を企む者も同時に相手取るつもりで、勝たねばならないと言う事ですか?」
「そうだ。侵入者と正面から戦えば、勝てたとしても大きなダメージを受けてしまう。そんなことになれば、玉座を狙う者共の思い通りになってしまうのだ」
「思慮のないことを申してしまいました」
「よいか、勝つならば反乱を起こすであろう者共との連戦を考え、圧倒的な力で勝たねばならぬ。そしてもし勝てぬと判断したのなら、侵入者と手を組むことを考えねばならぬ」
「異界の者共と手を組めて申されるのですか!?」
「誇りをかけて死ぬまで戦うのが魔族の道だと思うのか?」
「あ? いえ、どれほど卑怯な手を使おうとも、勝つこと、最後に勝つことが大切でございます」
「ならばどうすればいいのかな?」
「反乱を企てる者共に勝てる余力を残した状況で、侵入者に詫びを入れて戦いを止め、反乱者共を先に攻め滅ぼし、力を蓄えて再度異界に攻め込みます」
「そう言う事だ」
「ですが、魔法陣を起動させておられるのを見ると、まだ侵入者を殺すことを諦めておられないのですよね?」
「当然だ。余力を残して勝てるのなら、その方がいいに決まっておる」
「安心いたしました」
「だからだ。お前は決して戦いに加わるのではないぞ」
「なぜでございますか?」
「お前はまだ血の気が多いから、怒りに任せて不利な戦いをはじめかねん」
「確かに。でしたら私は城を出ていましょう」
「そうだな。離宮に行って、万が一に備えておれ」
「万が一とは?」
「侵入者が和睦を拒んだ場合いだ」
「父王陛下!」
「何があっても次代の王はお前が継ぐのだ。分かったな!」
「はい。父王陛下」

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