大国王女の謀略で婚約破棄され 追放になった小国王子は、 ほのぼのとした日常を望む最強魔法使いでした。

克全

第134話魔界

ダイが魔界に移動した直後は、さすがにどの魔族も人間が魔界に移動できるとは思っていたかったので、全く無警戒でいた。
だがさすがに魔王は直ぐにダイが魔界に入り込んだ事に気付き、念話を使ってダイの周辺にいる魔族に迎撃を命じた。
多くの魔族は、自分たちでさえ向こう側の生物に召喚されなければ移動できない、異界との遠く強固な空間を移動してきたダイに恐怖を感じていたが、同時に移動直後の消耗している状態なら勝てるとも思っていた。
ダイを倒すことで魔王の歓心を買う事ができるだけでなく、倒したダイを食べる事で、魔界にまで移動することができる強大な力を手に入れられると考えていたのだ。
元々の自分の力に加えてダイの力まで手に入れられれば、魔王を超えることができると考える魔族もいれば、魔王を超えることはできなくても、伯爵や公爵に登れるかもしれないと考える魔族もいたのだ。
最初にダイに攻撃をしかけたのは、魔界でも有数のスピードを誇る男爵であった。
「貴様がしんりゃ」
グジャ!
魔界の男爵は、ダイを侵略者と断じて、名乗りを上げてから堂々と倒すつもりでいた。
その方が魔界での評判が上がり、子爵伯爵と爵位を上げることができると思っていたのだが、ダイを侵略者と断じている途中で殺されしまった。
魔界からの侵略を許したことで、ルイが自分自身を責めているので、草々に魔王を倒してしまい、ルイが自責の念で苦しまないようにしたいと、ダイは思っていたのだ。
そんなダイには、魔界男爵の言葉を聞いている時間などなく、何の躊躇もなく、話しかけてくる魔界男爵を叩き殺した。
そしてダイは魔王のいる方向を魔法探知で確認すると、躊躇することなくその方向に向かって最速で駆けだした。
その移動速度は、先ほどの魔界最速の男爵でも足下に及ばないもので、魔界男爵の三倍のスピードだった!
そんな速さで移動するダイには、魔王のいる方向から討伐に向かって来る魔族が殺到することになった。
下は魔族の一兵卒から上は大公爵に至るまで、ありとあらゆる魔族がダイを倒さんと殺到してきたのであった。
最初ダイは、魔界への移動で使った魔力を回復させる意味もあり、魔力攻撃をひかえて、ルイからもらった複合セラミック製の長槍を振るって、攻め寄せる魔族を千切っては投げるような無双の迎撃を見せていた。
十メートルを超える長槍を変幻自在に操り、槍先で突き殺すこともあれば、刃先で斬り殺すこともあり、時には柄で叩き殺すこともあった。
だが余りに多くの魔族が、全周囲から無差別に魔法攻撃と肉弾攻撃をしかけてくるので、槍の攻撃と回避だけでは対応できなくなり、次第に攻撃魔法と防御魔法も使わなければいけなくなってきた。
少しでも知恵の周る魔界の貴族は、ダイが正々堂々と戦えるような相手ではないと見抜き、そもそも卑怯卑劣こそ正義と考える魔族だけあって、魔界の雑兵と先に戦わせる戦法を選んだ。
雑兵との戦闘で消耗したダイを、簡単に倒して喰らおうと魔界の貴族たちは考えたのだった。

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