大国王女の謀略で婚約破棄され 追放になった小国王子は、 ほのぼのとした日常を望む最強魔法使いでした。

克全

第132話反攻

魔王には、単独でこの世界に来る力も技もなかった。
この世界の人間が魔王召喚魔法陣を築かないと来られないのだった。
だが魔王召喚魔法陣が九割完成していたので、無理矢理その力を使う事で、遠距離攻撃だけは使う事ができていた。
だが未完成の魔王召喚魔法陣の力を無理矢理使ったことで、魔王召喚魔法陣に大きな負担をかけたうえに、蓄えられていた生贄の力まで消耗してしまった。
一人残った魔族の奮戦で、新たに生贄の力を蓄えていたのだが、それも二度目の遠距離攻撃で消耗してしまった上に、魔王召喚魔法陣にも無視できない大きな負担をかけてしまっていた。
もう一度魔王が遠距離攻撃の為に魔王召喚魔法陣の力を利用すれば、せっかく完成間近まで築かれた魔王召喚魔法陣が崩壊してしまうのだ。
だが魔王自身も他の魔族も、自分からは異界に行くことができず、相手に召喚魔法陣を築いてもらって初めて移動できるのだった。
だが幸いな事に、目的の世界へ移動できる魔族が三氏族いる。
異界で多くの一族を失い、弱肉強食の魔界で戦う力を大きく低下させてしまい、最後の頼みの綱である魔王の寵愛すら失ってしまった氏族だが、目的の異界との門だけは確保していた。
魔王は間髪を入れずに三魔氏族と連絡を取り、異界へ大攻勢をかけることを条件に、裏切りを許し魔界の領地を安堵することにした。
しかもただ許すだけではなく、功績によっては異界で一階級上の爵位まで与えると約束し、魔界では最低の食料でしかないが、異界では凶悪なモンスターと恐れられているスライムを大量に貸与してもらえた。
もう後がなかった三魔氏族は、バカ王女との契約によって手に入れた門を使い、老若男女を問わず残りの魔氏族全てで異界へと攻め込んできたのだった。
「殺せ、殺せ、殺せ、殺せ! 何も考えず、ただ目の前にいる人間を殺して、殺して、殺しまくれ!」
三氏魔族は何の戦法もなく、一魔一魔が広く散らばり、ただ人間を殺して魔王召喚に必要な生贄数をそろえようとした。
ただ一つだけあった考えは、一ヵ所に固まると一挙に滅ぼされてしまうから、広く遠く逃げ広がりながら人間を殺すと言う事だった。
だがそのたった一つの考えが、二人しかいないルイとダイが魔族を迎撃するには、一番対処に困る戦法であり、同時に殺害現場をエステ王国内から周辺各国に広げることになった。
三魔氏族による無差別虐殺は、各国の治安を激烈に悪化させた上に、魔族通過後に残されたスライムによる人間の捕食が、生き残った人間の心を荒廃させてしまった。
スライムに取り込まれた友人や家族が、透明なスライムの中でゆっくり消化されていく姿を見る事は、人間性を失うのに十分な衝撃であった。

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