大国王女の謀略で婚約破棄され 追放になった小国王子は、 ほのぼのとした日常を望む最強魔法使いでした。

克全

第129話介入

ルイはクリューサーオールに騎乗して空を駆けた。
側にはペーガソスが誰も背に乗せず並走している。
この頃にはクリューサーオールもだいぶ成長していて、短時間ならダイやペーガソスが近くにいなくて、泣き出したりしなくなっていた。
だがダイの気配が感じられない状態で、ルイの気配まで消えてしまうと泣いて暴れる可能性があったので、今回は一緒に連れていくことになったのだった。
瞬く間にネッツェ王国の内乱現場にたどり着いたルイは、問答無用で眠り魔法と麻痺魔法をかけ、一瞬で戦いを止めてしまった。
ルイはとにかくまずは戦いを止めて、その後で魔族がいるかどうか確かめるつもりだったが、予想通り魔族はいなかった。
残っている魔族は、とても慎重と言うか臆病と言うか、ルイやダイと会わないように細心の注意を払っているようなので、ルイとダイが介入するだろう戦場にいるはずがないと予想はしていたのだ。
だからルイの落胆は少なかったが、それでもわずかな可能性を期待していたので、残念な事に変わりはなかった。
いったん戦いを止めたなら、後はいつもの手順で捕虜にして、戦うことも逃げる事もできなくするだけだが、ここでも援軍を当てにすることができないので、魔晶石を核にした使い魔を千頭程度起動させて、王族軍と首長軍が再び戦いを始めないように監視させた。
もちろん内乱を再開したくても、世話役に縄を解かれたもの以外は厳重に縄をかけられたままなので、よほどのことが無ければ自由を取り戻すことなどできなかった。
「誰に反乱を持ちかけられたのだ?」
「魔族だ。魔族が協力すると言ってきた」
「何の疑念も抱かずに、魔族に魂を売ったのか?」
「俺をネッツェ王国の王にしてくれると約束してくれた。何よりもう直ぐこの世界は魔法様の支配下になり、今のうちに忠誠を誓っておかないと、ネッツェ王国の全ての民が殺されると言われた」
「本当にそれを信じたわけではないですね。信じた振りをすることで、自分に対しても家臣領民に対しても、王家に対する謀叛を正当化しようとしたのですね?」
「そうだ。大義名分なしに謀叛を起こすわけにはいないからな」
「内乱を起こすのは自分一人ですか? 魔族の仲介で、他の首長や貴族、他国と同盟を組んでいるのではありませんか?」
「他の貴族は巻き込んでいない。貸しを作ると国王になった後で困るからな。だが隣国とは同盟を組んでいる。もともと国境線を預かっていたから、表立っても内々でも交流があったから、魔族に味方につけてくれるように頼んだら、直ぐに援軍を約束してくれた」
ルイが情けをかけることなく、捕虜にした首長に自白魔法をかけて、全てを白状させたのだが、ここで魔族の行き先を推測させる答えを得られた。

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