大国王女の謀略で婚約破棄され 追放になった小国王子は、 ほのぼのとした日常を望む最強魔法使いでした。

克全

第126話開戦

「大変でございます! イマーン王国がネッツェ王国に攻め込みました!」
「やられましたね」
「はい。私の失敗です」
「ダイだけではありませんよ。私も視野が狭くなっていました。どうやら魔族がこの世界に残っていたようですね」
「魔王に殺されたか、魔界に逃げたとばかり思っていました」
「私もです。ですが残っていた」
「成敗されますか」
「そうですね。ダイに任せていいですか?」
「はい。魔族を殲滅するとともに、戦争も止めて見せましょう」
「頼みましたよ」
ルイとダイは、エステ王国の王宮を占拠していた。
ルイが王宮に戻った時、ダイはバカ王女を殺しただけでなく、王族全てを殺していた。
ルイはダイに言いたいことが沢山あったが、それを飲み込んでダイのやり方に従うことにした。
ベルト王国以外の全ての隣国に、戦争をしかけようとしていたエステ王国は、今後のかじ取りが非常に難しかった。
一つ間違えれば、周辺国すべてから攻撃を受けかねない状況であり、一兵も使わず、たった二人で魔族と二カ国の軍を負かしたルイとダイでなければ、周辺国を抑えられない状況だった。
事前にルイが、周辺国に魔王召喚に関する親書を送ってはいたが、それを全て信じてもらえるはずもなく、信じてもらえたとしても、難癖をつけて少しでも領土や金銭を手に入れようとするのが国際常識だった。
バカ王女にいいように動かされていた、無能なエステ王国の王族に任せることはできない。
エステ王家の人間を傀儡にして、ルイが実権を手に入れたとしたら、必ず周辺国が他の王族を操り、国内を混乱させようとするだろう。
あわよくばルイの傀儡を打倒し、自分たちの傀儡を国王に就けようとするだろう。
そんなことになって困るのは、エステ王国の民なのだ。
それよりは王族を皆殺しにして、ルイを征服王として戴冠させた方が、民を護ることができる。
ダイがそう判断して事を、間違いだと言い切ることが、ルイにはできなかった。
そのような状況では、エステ王国内に隠されている魔法陣探しはできても、他国にまで探査の手を広げることはできなかったのだ。
だがミカサ公爵家は動いてくれていた。
もともとベル王家の手足として働いているミカサ公爵家は、隣国にベルト王国侵攻の意思がないか常に警戒していた。
国境を接していなくても、一国が戦争を決断すれば、広範囲に色々な影響が及ぶので、多少遠い国であっても密偵を派遣していた。
だからこそ、イマーン王国がネッツェ王国に侵攻した翌日には、その事実をベル王家はもちろん、ルイとダイにも知らせることができたのだ。
信用できるエステ王国の人間が一人もいないルイではあったが、ミカサ公爵家が派遣してくれた一族が助けてくれるので、何とかエステ王国を統治できていた。
もっともバカ王女が実権を握っていた時に、民を虐げていた貴族や商人や聖職者を、いまだに処罰することができていない。
ルイとごく少数のミカサ一族だけでは、王宮内を統制するのが精一杯で、貴族や教会の領地にまで手出しすることができなかった。
そんな状況で、ダイが王宮からいなくなるのは、エステ王国統治に大きな問題であった。

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