大国王女の謀略で婚約破棄され 追放になった小国王子は、 ほのぼのとした日常を望む最強魔法使いでした。

克全

第120話侵入

「さて、王女殿下。もう愚かなことは止めていただきましょう」
「おだまりなさい! 小国の第三王子ごときが、私と対等に話をするなど不遜よ!」
「やれやれ。貴女のあまりの愚劣さに、胸糞が悪くなります」
「おだまりなさい! 誰かある! 狼藉者よ! 早く殺してしまいなさい!」
「やれやれ。厳重な王宮の結界を破った私に、勝てる者がいると思っているのですか?」
「私には魔族が付いているのですよ! 国を離れて護衛の手薄になったお前など、簡単に殺してしまえるのです。何をしているの、早くこの者を殺してしまいなさい!」
「私は、家臣がいなければ何もできない貴女のような、弱くて愚かで下劣な存在ではありませんよ。たとえ相手が魔族であろうと、戦って勝てるだけの鍛錬を積んでいますよ」
「おのれ、おのれ、おのれ! 何をしているの! 早くこの下品な男を殺してしまいなさい!」
「どうやら王宮にいた魔族は、勝てないと分かって逃げ出したようですね。そのような魔族と契約するなど、本当に貴女は愚かですよ」
「キィー! 許しません! この世界で一番美しい私を愚弄するなど、絶対に許しません! 誰でもいいから早く来るのです! 早く来てこの偽者を殺すのです!」
「偽者? 私は私であって、誰かを騙った事など一度もありませんよ?」
「嘘をおっしゃい! 私を差し置いて、世界で一番美しいと言っているではありませんか!」
「はぁ~? 世界で一番美しい? そんなことは一度も言っていませんし、見た目の美しさなど些細なことです。いったい誰がそのような愚かな事を言っているのですか?」
「おのれ、おのれ、おのれ! 美しさを些細な事などと、この田舎者が! 美しさ事が正義なのです! 美しい者に尽くすことは、人間の義務なのです! 私は幼い頃からずっと世界で一番美しかったし、これからも美しいのです!」
「だれだ? このバカにバカな考えを教えたのは?」
「キィー! 父も母も爺も大臣も、全ての者が私をほめたたえたのです。全ての者が私に貢物をし、私の笑顔を得るために命を捧げてきたのです。それがこの世界の理なのです。美しさこそが全てであり、世界で一番美しい私こそが至高の存在なのです!」
「だが、俺の事を世界で一番美しいと言った者がいたのだろう?」
「キィー! 許しません! 認めません! そんなことはあってはならないのです! 死んでしまいなさい! 他の女たちと同じように、私より美しいモノは全て死ねばいいのです!」
狂乱したバカ王女は、誰も駆けつけない事とルイの言葉に自制心を失い、守り刀を抜いて切りかかってきた!

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