大国王女の謀略で婚約破棄され 追放になった小国王子は、 ほのぼのとした日常を望む最強魔法使いでした。

克全

第118話決別

「あれでよろしかったのですか?」
「しかたないよ。王太子殿下のお立場では、あのように答えるしかないからね。私がもし王太子殿下と同じ立場だったら、同じように答えていたよ」
「やはりあれは、お二人のお芝居だったのですね」
「兄弟だからね。阿吽の呼吸だよ」
「では、若様がフィン連合王国の国王としてエステ王国に宣戦布告されるために、王太子殿下が若様に絶縁を宣言されたのですね」
「直ぐに王太子殿下はこの国を離れられ、父王陛下から勘当の書状が届くだろう。同時に各国にも、私を勘当した事と、ベルト王国とフィン連合王国が絶縁したことを知らせるだろう」
「しかしそれでは、この国の統治に著しい弊害が出ると思うのですか、どうなされるのですか」
「大丈夫だよ。ベル王家やベルト王国から来ていた軍や軍官僚は帰国するけれど、元々のフィン王国領の大半はミカサ公爵領になっているから、ミカサ公爵家から官僚が送られてくるよ。もしくは軍官僚が退役して、ミカサ公爵家に仕官する形になるよ」
「あくまでも体裁を大切にされるのですか?」
「そうだよ」
「だったらフィン王国との開戦と同じように、エステ王国に攻め込ませればいいではありませんか?」
「バカ王女はあれで賢い所が有るから、向こうから攻め込んでは来ないよ。もしとち狂って攻込めと命じたとしても、側にいる魔族が止めるのではないかな」
「そうですね。あれほどの被害を受けた魔族が、魔王召喚が完成する前に我が国に攻め込むはずはないですね。ではいっそ、エステ王国軍に偽装した者たちに、我が国に攻め込ませればいいではありませんか」
「ベル王家の誇りにかけて、自作自演はできないだろうね」
「できませんか?」
「できないね」
「だったらミカサ公爵家がエステ王国軍に偽装して、ベルト王国に攻め込むふりをしてはどうでしょう? いえ、私が独断で攻め込むふりをいたしましょうか?」
「止めなさい。そんなことをすると、王家としてもミカサ公爵家を追放処分にしなければいけなくなります」
「ですがそれでは、若様が貧乏くじを引くことになるではありませんか!」
「しかたありませんよ。兄上様が長男として王太子と言う貧乏くじを引かれたように、私も三男の責任を果たさねばなりません」
「若様はバカです。あれほど責任を負うのが嫌だと言われながら、一番重い責任を背負われようとしておられます」
「一時的な事ですよ。直ぐに放り投げて逃げ出させて頂きますよ」
「どうやって逃げだすおつもりですか?」
「心配してくれるのですか? でも心配しなくて大丈夫ですよ」
ルイとダイ、いや、ベル王家は国是と家訓を護るため、ルイを勘当することで、専守防衛の建前を護りつつ、魔王召喚を防ぐつもりのようだ。

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