大国王女の謀略で婚約破棄され 追放になった小国王子は、 ほのぼのとした日常を望む最強魔法使いでした。

克全

第117話攻防

「よく国をお守りくださいました、王太子殿下」
「いえ、全ては国王陛下のご威光でございます」
「いえいえ、全ては王太子殿下のお力でございます」
「いえいえいえ、国王陛下あっての宰相でございます」
「うふ、うふ、うふ、うふ」
「うふ、うふ、うふ、うふ」
第二ダンジョンと古竜を家臣に加えたルイは、急ぎフィン連合王国に戻り、王太子殿下から話を聞くことにしたのだが、ここでどちらが今後の王位を継ぐかで駆け引きがあった。
ルイは留守の間を平和に統治した王太子殿下に王位を譲り、ベルト・フィン連合王国として、自分は全ての責任から逃れようとしたかった。
一方王太子殿下は、あわよくば自分が廃太子となって、ルイを新たな王太子にして、ベルト・フィン連合王国の王位につけ、自分は全ての責任から逃れたいと画策していた。
双方の駆け引きの場となったフィン連合王国の王宮は、前王家の豪勢な宮城をそのまま使用しているため、王太子やルイの好みとはかけ離れて華美な作りだった。
だからといってルイも王太子も、国民の血税を使って建造された王宮を壊すほどバカでもなければ、王宮を壊すパフォーマンスで人気を取らなければいけないほど無能でもなかった。
「もう不毛なことは止めようではないか。限られた時間がもったいないぞ」
「そうですね。ではどうなっているは教えていただけますか」
「ああ、いいぞ。どうやらバカ王女が魔王の召喚をしようとしているらしい」
「やはりそうでしたか。で、どうなされるのですか?」
「どうもこうもない。我が国は専守防衛の国だ、こちらから先制侵攻することはない」
「隣国が我が国を攻撃する為に、魔王を召喚しようとしていても、それを見過ごすと言うのですか?」
「先制攻撃した方がいいのは、分かりすぎるくらい分かっている。だが、それでも専守防衛を誓う我が国は、先制攻撃する訳にはいかんのだ」
「ベルト王国に、いえ、ベル王家に魔王召喚を止める力があるのに止めなければ、多くの国が魔王に蹂躙され、数多の人々が殺されることになります。それでもベル王家は動かないのですか?」
「ベル王家の力は、この世界を破壊するほどのものなのだ。どこかで線引きをしなければ、魔王以上の災厄をこの世界にもたらしてしまうのだ」
「それは十分理解していますが、それでも今回は先制攻撃をするべきではありませんか?」
「ルイよ、私はベルト王国の王太子なのだ。国法に背いて先制攻撃するわけにはいかないのだ」
「では魔王が召喚されるのを、ただ黙ってみていると言われるのですね?」
「そうだ」
「多くの国が蹂躙され、数多の人々が殺されていても、ベルト王国に攻め込んできない限り、助けないと言われるのですね」
「専守防衛を国是とするベルト王国は、そうするしかないのだ」
ルイとダイは激しい言い争いを始めた。

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