大国王女の謀略で婚約破棄され 追放になった小国王子は、 ほのぼのとした日常を望む最強魔法使いでした。

克全

第113話小古竜

このダンジョンの最下層は、なんと地下百十二階まであり、しかもその地下百十二階は全く仕切りのない広大な森林区画となっていた。
天井高も二十メートルもあるので、古竜が住むにも十分な広さと言えるのだが、唯一明かりがないのが問題だった。
だがそれは人間の話で、夜目の利く魔獣には何の問題もないのだろう。
そして森林なのだが、地上で太陽の光を受けて育つ木々とは違い、普通の洞窟に生えるキノコが巨大化したキノコの森林だった。
この環境は、ルイやダイが想像していたモノとは全く違っていた。
「古竜の住処ですから、他の魔獣など全く住んでいないと思っていましたが、普通に魔蟲や魔獣が暮らしていますね」
「私もこれは驚きました。これほど近くに古竜の気配を感じる場所で、平気で暮らせる魔蟲や魔獣がいるとは信じられません」
「家の古竜は少食だから、あまり魔蟲も魔獣も食べないんだ。長年そうやって暮らしているから、魔蟲も魔獣も安心しているんだ」
「それでも食べられる魔蟲や魔獣はいるんだろ?」
「いるにはいるが、他の大きな魔獣とは違って、周りを破壊することがないし目立つこともないから、食べられた魔蟲や魔獣以外は気付かないのさ」
ルイとダイの疑問に、無理矢理連れてこられたダンジョン本体が答えている。
二人と一体の会話は、ルイとダイのスピードがあまりに早いので、古竜の所にたどり着くころまでに終わらない程だった。
「なんだ?! 人間がよくこんなとこまでこられたな! いや、長年このダンジョンで暮らしてきたが、人間がやってきたのは初めてだな」
「はじめまして古竜さん。私はベル王家の第三王子:ルイトポルト・カール・ルートヴィヒ・ベルと申す者なのですが、ダンジョンさんを家臣に加えるにあたって、古竜さんに実力を認めてもらえとダンジョンさんに言われたので、ちょっと戦ってもらえませんか?」
「ふん! 人間ごときが不遜な事を言うと怒りたいところではあるが、ここまでたどり着いた実力と、ダンジョンの本体を探し当てた能力を認めて戦ってやる。心から感謝するのだ」
「ええ、感謝させて頂きますとも。それでどう言うルールで戦いますか?」
「ルールだと? 戦いに条件を付けるのか?!」
「もし私が勝ったら、ダンジョンさんだけではなく、古竜さんも私の家臣になってもらいたいのですが、それでいいですか?」
「誇り高き古竜に対して、勝つという不遜にとどまらず、戦いに負けて死ぬのではなく、人間の家臣になると言う屈辱に耐えろと言うのか!」
「勝負ですから、死んで名誉を保つと言うのも大切でしょうが、勝負の後で何を創り出すかも大切だと思うのですよ」
「ほう。勝負の後で創り出すモノがあると言うのだな」
「はい。私には夢がありますから」
「面白い! その夢をかけた勝負受けてやろう!」

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