大国王女の謀略で婚約破棄され 追放になった小国王子は、 ほのぼのとした日常を望む最強魔法使いでした。

克全

第110話魔王召喚

「これはいけませんね」
「はい! 由々しき事態だと思います」
ルイとダイは、使い魔の返事を受けて、事態の深刻さに気付いた。
「裏があると言うのですね」
「若様もお気付きでしょう」
「バカ王女の国が、隣国に侵攻をして虐殺を始めたのです。魔族召喚が目的だと分からねば、私もバカだと言われてしまうでしょう」
「今まで三度も魔族を召喚して、その度に撃退されているのです。よほどのバカでなければ、性根を入れた魔法召喚を行うでしょう」
「ダイの言う性根を入れた魔法召喚とは、どれくらい強い魔族を呼び出すものなのですか?」
「そうですね。この世界に知られている魔族召喚は、国家レベルの魔法陣を十数年もの期間をかけて描いたとしても、魔族の将軍を呼び出せれば上出来でしょう」
「ダイは魔将軍クラスを呼び出すと思っているのですね」
「いえ。恐らく魔王を呼び出そうと画策していると思われます」
「いきなり一番強い魔王を呼び出すのですか? それは無茶でしょう。それにこの世界に魔王を呼び出す術式は、知られていないのでしょう?」
「魔王召喚の術式は知られていませんが、それは人間が知らないだけで、同じ魔族なら知っていると思われます」
「なるほど。ミカサ公爵家に虐殺された魔族の生き残りが、復讐の為に王女に力を貸していると言う事ですね」
「はい。どうやってミカサ公爵家の眼から逃れたかは分かりませんが、自国内で生贄を集めきれなくて、他国と戦争を始めるほど、多くの生贄が必要な召喚魔法です。中途半端な魔族を呼び出すモノのはずがありません」
「たしかにそうですね。ですが手駒を増やすために、同時にいくつかの召喚魔法を併用しているという心配はありませんか」
「それはないと思われます」
「なぜですか?」
「魔王を呼び出せば、当然魔王に忠誠を誓う魔族は全て協力するでしょう。魔王召喚に必要な生贄をさいてまで、先に呼び出すメリットがありません。先に魔将軍や魔男爵を呼び出したせいで、魔王召喚の生贄が足らなくなったらバカ丸出しです」
「確かにダイの言う通りです。バカ王女のすることですから、ダイが想定している最悪の手段を選んでいない可能性もありますが、最悪の場合に備えるべきでしょうね」
「ではダンジョンの探査を中止して、直ぐにベルト王国に帰られますか?」
「う~ん、どうしましょうかね」
「何を悩まれておられるのですか?」
「このダンジョンを臣従させて、人間と共生できるようにしておいた方がいい気がするのですよ」
「若様は魔王召喚を止められないとお考えなのですか? 魔王が召喚された場合にも、人間が生き残るために、ダンジョンとの共生は必要不可欠とお考えなのですか?」
「そこまで悪く考えている訳ではないのですが、ダンジョンを臣従させたいと思ってしまうのです。私の虚栄心かもしれませんが」
「いえ。若様のカンは大切にした方がいいでしょう。ここは先にダンジョンを臣従させましょう。それからベルト王国に戻りましょう」

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